地域や住民自らが、エネルギーとどうかかわっていくかを主体的に考え、エネルギーを創出、あるいはその創出を支援し、賢く活用する。こうしてエネルギーを“自分事”化することで、エネルギーと自立的、自律的な関係を築いていく。このような動きを「エネルギー自治」と表現できます。

エネルギー自治は、持続可能な社会をつくる契機になると期待されます。ただし、それには再生可能エネルギーが実現し得る持続可能性について、以下の4つの側面から包括的に理解することが大切でしょう。

その第一は、温暖化を緩和したり、将来の世代の安全や生物多様性を確保するといった「利他的な側面」です。また普及の上では、売電収入などの経済的メリットや、再生可能エネルギーによる町おこしなど、「主体の活性化という側面」も重要になるでしょう。そして3つ目は、自然災害や環境リスクに対する安心・安全の確保という「リスク対応としての側面」。さらに社会の健全な基盤と資源を確保し、将来へ向け良質な社会のストックをつくるという「基盤的な側面」があります。

こうした全体像を理解し、環境と経済社会の動きを一体的に考えながらエネルギー自治を進めることで、再生可能エネルギーの価値や効果を高めることができます。

ヒューマンウェアの
充実も大事な要素

再生可能エネルギーの事業化を支援する国の施策もあって、地方自治体が主体的に再生可能エネルギーを推進する例も各地で増えています。

自治体が公共事業として再生可能エネルギー事業を主導する例、公共資源を提供して民間事業者が発電事業を展開する例、民間事業者が域内で行う発電事業を支援する例などさまざまなケースがありますが、いずれの場合も、地域の活力を高めるよう、地域の社会、経済との関連づけを行う必要があるでしょう。

そのためには施設などのハードウェア、支援制度などのソフトウェア、そして事業に参画する個人、企業の意識を高めながらその関係性を強めるというヒューマンウェアを同時に充実させていくことが重要。やはり人の力は大切で、当然ながら施設や制度だけで地域を変革していくことはなかなかできません。一方でヒューマンウェアを支えるためにも、行政には、「環境イノベーションの普及」と「地域環境力の形成」の相互作用を高める施策をデザインすることが求められます。

私たちはエネルギーをめぐり、冒頭に挙げたような危機にさらされています。太陽光、風力、水力、バイオマスといったエネルギーは、こうした危機に対処する有効な手段になり得るものです。すでに個人や企業による民間レベルでの再生可能エネルギーの創出、活用が進むとともに、先進的な取り組みで再生可能エネルギーの普及を主体的に後押しする自治体が各地で登場しています。まだ地域差はありますが、現に成功しているエリアがあるということは、その他の地域もエネルギー自治を実現し、地域の活力を高めていけるポテンシャルを持っているということ。行政による支援策と多彩な選択肢の登場で環境が整うなか、再生可能エネルギーの可能性はさらに高まっているといえるでしょう。