「やんわりとした脅し」が効果絶大

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人の心理を読み解けば、営業の達人になれる

ただし、ビジネスにおいては、この「周りもやって(買って)いますよ」という営業トークだけでは、肝心な契約の現場では、「押しが弱い」とみなされることも多い。

それは悪質商法も同じで、ある換気扇の業者は、次のような手も使う。

マンション管理会社を装った業者は、引っ越して間もない人の家を訪れる。そして、換気扇の点検をしながら、「換気扇のフィルターを取り付けた方がよいですね」という。

その理由として、こう語るのだ。

「このまま放っておくと、換気扇が油まみれになり、油が料理にも混じって、体に害を及ぼすことになる。また、その汚れが原因で、ゴキブリも大量発生して、マンション全体の不衛生につながります」

そして、こうも付け加える。

「このフィルターを取り付ければ、換気扇が汚れません。ここのマンションの人は全員、このフィルターを買ってくれていますよ」

冷静に考えれば、全員買っているわけがないのに、これを聞いた住人は、「周りの人に迷惑をかけてはいけない」との思いから購入してしまう。

業者は「周りの人々もやっている」理由にまで、踏み込み、周辺に与える影響を強く意識させて、決断を促すのだ。

この手法は、霊感商法でもよく使われており、霊能者や鑑定士を名乗る人物が家系図を取りながら、病気や事故でなくなった人を家族や親族などの状況を聞き出して、「あなたが信心深くないと、あなた自身だけでなく、周りの人が悪因縁で次々に病気や事故に遭ってしまうかもしれない」と話す。

これを聞いた人は、「愛する人たちに不幸なことが起こってはいけない」との思いから、因縁を払うための商品を買うことになる。こうした手口には、周りを気遣う優しい人が騙されてしまいがちになる。