3人に共通する異常な浪費癖

筧被告の事件から連想するのが、昨年8月に出版された『後妻業』というセンセーショナルな犯罪小説だ。著者は直木賞作家の黒川博行氏。知人の父親が亡くなった際、内縁の妻を名乗る女性が現れ、公正証書遺言を振りかざして、遺産を要求したのだという。その経緯を黒川氏はこう話す。

「知人がその被害に遭って、相談された話をもとに書いた。そこでも9年間で高齢の男性が4人死んでいる。『後妻業』という言葉は、そのときに知人が使っていたものだ。入籍はしていないものの、80過ぎた爺さんに60代、50代の女が積極的に近づいてきたら、それはもう金目当ての可能性が高い」

こうした事件の背景には、いまの時代ならではの仕掛けがある。それが、筧被告なら結婚相談所であり、木嶋被告なら婚活サイトだ。独居老人や結婚願望のある中年男性が多く存在するなら、女性でも単独の犯行が可能だったという理由もそこにある気がする。会員になるか、サイトに登録しておけば、言葉は悪いがカモはネギを背負ってやってくる。あとは、騙しやすそうな男性を選んで近づけばいい。

また、彼女たちに共通なことは、手にした億単位の高額な金銭を湯水のごとく使っていることだ。筧被告は株式やFX(外国為替証拠金取引)への投資。最終的には先物取引に手を出して、ほとんどを失っている。一方、木嶋被告は並外れた物欲を満たそうとしたのだろう。高級マンションに引っ越し、赤いメルセデスを乗り回す。

角田元被告は、被害者宅に居座るだけでなく、美的感覚を疑うような調度品で部屋を飾る。加えて、食事は宅配寿司などを大量に頼んでの、贅沢三昧だった。こうした無自覚な浪費癖も普通ではない。皮肉なことだが、大金をせしめたのに、それがたちまちなくなり、次の犯罪に進んでいく。

黒川氏は「1人目を殺害するのは非常に抵抗もあると思う。けれども、2人殺すのも、3人も一緒だ。それで金銭を得るわけだから、後は惰性でためらわないだろう。それと、毒物を使うというのは、首を絞めるとか、刃物で刺すのとは違って、殺人のハードルは低い気がする」と見る。(文中敬称略)

(兵庫県警=写真)
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