ずっと本社勤務で転勤なし

だが、中には他の社員と差をつけていない会社もある。生命保険会社や信託銀行など金融機関の一般的な給与水準は他の業界に比べて高い。なおかつアクチュアリーの場合は同じ給与の等級の社員よりも1割程度高いと語るのは国内保険会社の企業数理室に所属するアクチュアリーだ。

「実務経験があり、準会員であれば30歳ぐらいで800万円ぐらいはもらっていると思う。40代の正会員の資格を持つ課長職であれば1400~1500万円ぐらい。当社でも1人しかいない保険計理人は推測だが、2000万円近くはもらっているだろう」

年収的には、中途採用が多いこともあり、日本企業よりも若干高いようだ。外資系人材紹介会社のコンサルタントが、実際の転職事例を紹介してくれた。

「国内生保会社の28歳の研究会員だった人が外資系の年金コンサルティング会社に転職した。前職では年収700万円だったが、900万円にアップした。正会員ではないが、若く、英語もできることが評価されたのだと思う。外資系金融のディーラーのように4000万、5000万円をもらっているアクチュアリーはいないが、比較的高いのが年金コンサルティング会社のアクチュアリーだ。30代半ばの正会員で1500万円ぐらいもらっているのではないか」

処遇の高さに加えてアクチュアリーのメリットはまだある。一つは転勤がないことだ。生・損保の営業職は国内転勤が頻繁に行われているが、数理部門は本社から離れることはなく、単身赴任の悲哀を味わうこともない。

もう一つのメリットは決してリストラされることがないことだ。人材紹介会社のコンサルタントは「損害保険会社や信託銀行の統廃合が進み、営業職を中心に多数の人がリストラされた。だが、アクチュアリーがリストラされてという話は聞いたことがない。アクチュアリーはそれほど会社にとっては貴重な存在であり、転職市場でも売り手市場であることには変わりはない」と指摘する。

アクチュアリーは年金債務や決算書類をいち早く分析し、役員よりも先に会社の根幹の情報を知る立場にある。仮に会社が危ないとわかれば、自ら退職することも可能だ。仮に複数のアクチュアリーが同時に退職したら、その会社は危ないかもしれないと転職業界で噂になることもあるらしい。