住宅リフォームの市場規模(増築・改築工事費及び設備等の修繕維持費の合計)は横ばい傾向にあったが、徐々に拡大しつつある。
出所:公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター

日本のリフォーム市場は緩やかに拡大しつつある。2013年の住宅リフォーム市場規模(増築・改築工事費及び設備等の修繕維持費の合計)は、6兆1000億円(前年比112%増)に達した(グラフ参照)。消費増税を前にした駆け込み需要が市場を押し上げた側面もあるが、背景には、長らく新築中心とされてきた住宅観の変化がある。日本の住宅ストックは約5760万戸と、すでに国内の世帯数を15%上回っている(08年時点)。人口が減少に向かう中、住まいの“数”はすでに充足しつつある。次に問われるのは、既存の住宅ストックを生かしながらその“質”を高めるリフォームの技術とアイデアだ。

耐震、省エネ、二世帯化で
付加価値を高める

リフォームに関心を寄せている世帯は多い。一般社団法人住宅リフォーム推進協議会の調査(※)によると、30歳以上の持ち家居住者では、全体の6割以上が「リフォームをしたい」と回答している。

かつて住まいのリフォームといえば、キッチンやトイレユニットの交換など、老朽化した設備の更新がメーンだった。近年はそれに加えて、環境性能や安全性など、住まいの価値を高めるリフォームに注目が集まっている。耐震補強や気密性・断熱性の向上による省エネ化、太陽光発電システムの設置などは、まさに付加価値型リフォームの代表例といえるだろう。

家族構成の変化に伴う住まいの見直しも、今後ますます重要となると見込まれる。子供が独立した結果生じた余剰スペースを持て余す世帯が増えているからだ。現に、持ち家の高齢単身・夫婦世帯の約6割は、100平方メートル以上の広い住居で暮らしているというデータもある。その一方で子育て世帯からは、経済的に無理のない負担の範囲内で、より広い住まいでの暮らしを望む声が出ている。

そんな住まいと暮らしのミスマッチに対する解決策を、リフォームは提示する。例えば、思い切って住まいを二戸に区切る改築を行えば、親子が気兼ねなく暮らせる二世帯住宅として活用できたり、余った一戸を賃貸住宅として子育て世帯に貸し出すなど、さまざまな選択肢が生まれる。

経験に基づく技術力が
事業者選びのカギ

いざリフォームを実施するうえで重要となるのが、事業者選びだ。

リフォームは時に、新築以上の技術力や提案力が求められる。人が暮らしている場所で工事を進めなければならないうえ、既存住居との兼ね合いにも配慮が必要など、制約が多いからだ。前述の調査によると、リフォームしたいと考える人が業者選びで重視しているのは、「工事の質・技術」が60.7%でやはりトップ。これに「工事価格」や「担当者の対応・人柄」などが続いた。リフォーム事業者は、リフォーム会社やハウスメーカー、住宅設備会社など多様化しており、それぞれに強みも異なる。希望するリフォームと事業者の得意分野が一致しているかを前提としつつ、豊富な施工実績や専門知識を備えた担当者の有無などが、事業者選びの基準となるだろう。

適切なリフォームは住まいの寿命を延ばし、資産価値を維持するのに貢献する。住宅を30年前後で建て替える時代から、丁寧に修繕しながら50年、100年と住み継いでいく時代に移りつつある。リフォームが果たすべき役割は大きい。

※「インターネットによる住宅リフォーム潜在需要者の意識と行動に関する第8回調査報告書」一般社団法人住宅リフォーム推進協議会。