国内の生産比率を再び5割に戻す。中国や東南アジアから国内の工場に生産を再移管する──。

昨年来、メーカーの“国内回帰”の動きが頻繁に報道されている。製造業が戻れば、物流ほかその他の業界にも好影響を与えるが、実態はどうか。まず具体的な数字で確認してみたい。

国内の設備投資について、日本政策投資銀行の調査によれば、2013年度の実績(全産業)はプラス3.0%、今年度の計画(同)もプラス15.1%と増加傾向だ。今年度の資金計画で「資金配分を高める使途」を聞いても、国内設備投資がトップで海外設備投資や人件費を上回っている。

そして経済産業省発表の工場立地動向調査。これについても、14年上期の調査結果は件数で前年同期比53.7%増、同じく面積で34.3%増だ。さらに下のグラフを見れば、ここ数年、回復していることがよく分かる。


出典:経済産業省「工場立地動向調査」

昨年来の国内回帰の主な要因には、もちろん円安がある。しかしそれは、「為替の状況が許せば、やはり国内で事業を行いたい」という本音の表れでもあるだろう。あらゆる分野で製品のライフサイクルが短くなる中、企業には常に革新的なアイデアを形にしていくことが求められている。そこではやはり、こまやかで柔軟な対応が取りやすい国内の環境が重視されるわけだ。

前例のない挑戦を
後押しする国の施策も

実際、国の施策も、そうした企業の状況を後押しするものが充実していきている。例えば、「グレーゾーン解消制度」「企業実証特例制度」をご存じだろうか。

グレーゾーン解消制度は、企業が前例のない取り組みをしたり、製品を開発する際、それが既存の規制に抵触するかどうか、事前に確認できる制度だ。他社に前例がない事業の場合、規制の対象になるか不明確な場合も多い。そうしたとき、一企業で詳細な調査をしたり、関係省庁と交渉したりするのは難しく、結果的に「分からないから、止めておこう」ということにもなりかねない。

そこでこの制度では、企業が所管大臣に規制の有無を照会すれば、後は関係省庁間で確認が行われ、結果が報告される。つまり、企業に代わって所管省庁がグレーゾーンを解消してくれるわけだ。

さらにグレーゾーン解消制度で「規制あり」と判断されてしまっても、特例的に規制の緩和を求められるのが企業実証特例制度だ。こちらも、所管大臣に活動計画などとともに提案すれば、関係省庁間で協議を行ってくれる。

これらの制度は、すでに活用が始まっており、例えばクルマの運転者が突然意識不明となった場合に安全に自動停止させるデッドマン装置が車検の対象になるなどしている。

加速する国内回帰の動きだが、重要なのはそれを持続的な成長につなげられるかどうかだ。単にコストの観点からだけでなく、中長期の視点で国内の環境や市場を生かせれば、それは競争優位の確保に大きく貢献するだろう。国内の地域といかに連携し、成果を生むか。企業の知恵が問われている。