なぜ「切らない」レーザー治療なのか

あなたの足の血管は、コブのように膨らんだりボコボコと浮き出たりしていないだろうか。ふくらはぎ、膝、太ももの静脈に血液がたまって浮き出た状態を下肢静脈瘤という。逆流を防ぐ弁が機能しなくなり、足のつま先から心臓へ戻るはずの血液が逆流することによって起こる。男性より女性に多く、40代以上の10人に1人に、足の表面にある太い血管「伏在静脈」にボコボコ浮き出る静脈瘤があるとみられている。

この下肢静脈瘤に対する画期的な治療法2種類に昨年、保険がきくようになった。「1470nmレーザーの治療」と「高周波(ラジオ波)治療」で、どちらも膝の静脈から細い管を入れ、血管の中から静脈瘤のある血管を焼き切る治療法だ。1470nmレーザーは360度照射できるレーザー光で血管を焼き、高周波は120度の高周波を発生する細いコイルを使う。高周波(ラジオ波)は、肝臓がんの治療などでも使われ体への負担を減らす治療として注目される。局所麻酔をしているので、熱さや痛みを感じることもほとんどないそうだ。

従来、下肢静脈瘤を完治させる治療法として、足の付け根と膝を2~3センチ切開し、静脈瘤ができている静脈を引き抜くストリッピング手術が行われてきた。ストリッピング手術は再発率が低く治療成績はいいものの、入院が必要な場合が多く、皮膚を切開しなければならないうえ、皮下出血、痛みなどが残る恐れがあるのがデメリット。2011年には血管の中から治すレーザー治療が保険適用になり、体への負担が減ると期待されたが、従来型の波長の短い980nmレーザーは強い痛みを感じたり皮下出血が起こったりすることがあるのが難点だった。