「イスラム国」テロリストの「日本人攻撃」予告を受け、国内外の日本人の安全対策に強い関心が集まっている。

だが、安全対策に“完璧”などない。殺害された後藤健二さんと同様、政府がどう警告しても、「自己責任」を唱えて危険地域に足を踏み入れようとするジャーナリストを押し留めるのは難しく、その中から“第二の後藤さん”が出ることを政府は最も危惧している。

実際、後藤さん殺害の2日前にも外務省を狼狽させる出来事が起きている。1月30日、外務省はトルコのシリア国境地域の危険情報を急きょ最高ランクの「退避勧告」に引き上げた。国境地域の日本人記者を狙った誘拐、テロ情報がインターネット上に流れたためだ。全国紙外務省担当記者が話す。

「外務省記者クラブに対し“国境地域に日本の報道陣が集まっているが誘拐、テロの恐れがある。現地に記者がいる社は記者の氏名などを連絡してくれ”と外務省から“重要”と書かれた緊急の申し入れがあった。焦っている様子を怪訝に思っていたら、朝日新聞の複数の記者がトルコ側からシリアに入ったと省内が大騒ぎになっていた」

翌31日、ライバルの読売新聞は「朝日の複数記者、外務省が退避要請のシリア入国」と題し、外務省が渡航見合わせを強く求めていたシリアに朝日のイスタンブール支局長が入ったと報道、産経新聞も「記者も当事者意識を持ってほしい。非常に危険で、いつ拘束されてもおかしくない」という外務省幹部の言葉を引いて批判した。

だが、ある朝日記者は「シリア入りした2人の記者はトルコ、シリア政府や実効支配している組織の許可を得、ガードマンを雇うなどセキュリティーも整えていたと聞いている。誘拐されたら朝日批判に曝されていただろうが、朝日の国際報道部長は元カイロ支局長で中東に詳しく、安全と判断。社もオーケーした」と反論する。

報道をめぐっては朝日記者が「政府広報じゃないんだから、もっとジャーナリズムしませんか」などと読売、産経をツイッターで揶揄し、これに産経記者が「文章の『軽さ』に苛立ちを覚えた」と噛みつく一幕も。ジャーナリスト一人ひとりがテロとどう対峙するかが否応なく試されるときがきた。