「月収の○%を貯蓄」も間違い

では、比率管理するのを「支出」ではなく、「貯蓄」にしたらどうでしょうか。これなら悪くないと思われるかもしれません。しかし、これもあまりお勧めできません。

例えば、「貯蓄15%」が適当としましょう。手取り20万円だとすれば、毎月の貯蓄は3万円です。手取りが30万円になると、4万5000円に。確かに、収入が増えて貯蓄も増えます。

ところが、よく考えれば、増えた月収10万円のうち、貯蓄にまわっているのはわずか1万5000円(つまり、15%)。残りの8万5000円(75%)は、何らかの支出にまわっています。当然です。

収入は「消費する」か「貯める」かなので、どちらかを比率管理すれば、それにつられてもう片方の比率も変わります。結局のところどちらかを比率管理すれば結果は同じことです。

いやいや。

収入がアップすれば、比率そのものを見直せばいいではないか、というご意見もあるかもしれません。でも、だとしたら、そもそも「比率」に何の意味があるのでしょうか。

「比率」で家計管理をしようとする限り、支出は収入金額に左右されてしまいます。「お金があるから」という理由での支出が増えやすくなってしまうのです。それはムダ遣いにつながりかねません。ココがNGなのです。

本来の「正しいお金の遣い方」は逆です。

自分にとって本当に必要か、本気で欲しいと思うか、いわば自分発信の買い方です。「お金があるから」でも、「売っているから」でもありません。

そうした外的環境に流されて買うのではなく、自分の中から発せられる必要性が原点でないと、お金はいくらあっても足りません。

いずれにしてもお金の遣い方には、その人の価値観や行動パターンなどが如実にあらわれます。ですから、「比率」には個性があるものです。自分が価値を重く置くものの比率は自然と高まります。それは悪いことではありません。むしろ、それでいいのです。

ということは、「正しいお金の遣い方」ができてくると、あなた自身の「比率」もできてくることでしょう。それを把握することは決してNGではありません。私自身、月の収支分析をする際に、相談者の「価値観」を探るために比率を計算することは普通にあります。

ですが、それ以上でもそれ以下でもありません。

一時点で比率を把握することは何ら問題ありませんが、時系列で捉えた場合、収入の変動に支出も流されてはいけません。「正しいお金の使い方」と真逆のことが起きてしまうからです。