7. 朝令朝改する
……戦略は大事だがこだわってはいけない

マーケティングは戦略が重要だが、戦略に固執するのはよくない。

先に述べたように、いま私がお手伝いしている化粧品の新ブランドは、ギフトとして売る戦略を立てた。その戦術を考えていく中で出てきたのが、メッセージカードをつける案だった。私は直感的に「これはいける」と判断。アイデアをさらに練って、ポストイットをつけることもいま考えている。

ここまでくると、マーケティングのコンセプトも「ギフト」から「メッセージ」に変わってくる。

真面目な人は、もとのコンセプトが変わることを嫌がるだろう。たしかに、マーケティングは、まず戦略を固め、戦略に沿って戦術を考える手順が一般的だ。ただ、いい戦術があるなら、戦略を戦術に合わせて変えてもいい。大切なのは化粧品を売ることであり、戦略にこだわることではない。

自分で立てた戦略だからといって、変更を躊躇してはいけない。お客の心をつかむには、朝令暮改ならぬ“朝令朝改”のスピード感が必要だ。

8. 企画書は一生懸命書かない
……あり物で作る料理はなぜ意外にうまいのか

アイデアを思いついたら、どのような形でもいいから、人に見てもらうことが大事だ。「もう少し磨いてから」と出し惜しみする人もいるが、1週間座禅を組んで考えたところで中身は変わらない。それよりも人の意見を聞いたほうが、アイデアに深みが出る。

企画書を書く時間ももったいない。企画書は、議論のための叩き台。「あのデータが欲しい」「もっときれいに見せたい」と努力する余裕があるなら、不完全でもいいから外に出すべきだ。

完璧主義でアクションが遅くなりがちな人は、ブリコラージュを意識してほしい。ブリコラージュとは、手持ちの材料で物をつくる手法のこと。献立を決めてから買い物にいくのではなく、冷蔵庫の中の物で料理をつくるイメージだ。考えてからつくるのではなく、つくってから考えるのだ。

高倉 豊(たかくら・ゆたか)
1948年、兵庫県生まれ。自由学園男子最高学部を卒業後、博報堂入社。40歳でパルファム・ジバンシイの日本法人トップに就任。その後、イヴ・サンローラン・パルファン、シスレー、タグホイヤーの日本法人など、計5社の外資トップを務め、次々に業績を回復させた。
(村上 敬=構成 相澤 正=撮影)
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