なぜ公的保険が必要か

現在、保育所(認可保育園)は、小・中学校、高等学校、幼稚園などとともに独立行政法人日本スポーツ振興センターの災害共済制度の対象となっています。この制度は公的な保険・補償であり、万一、これらの施設の管理下で子どものケガや死亡事故などが起こった場合には、施設側の過失の有無にかかわらず給付がおります。保育園・幼稚園や学校で子どもがケガをして、治療費についてこの給付を受けた経験がある人はたくさんいるはずです。

今回、新しく認可の仲間入りをした小規模保育や家庭的保育についても、この公的保険の対象となるのかと思いきや、そうはならない見通しになっています。同じ認可になるのになぜだろうと関係者は首を傾げています。

学校のための制度(文部科学省管轄)だから? 基準が低いから事故発生率を心配しているのか? など、私のまわりではいろいろな憶測も飛んでいます。

小規模保育・家庭的保育などを対象とした民間の保険も開発されていますが、日本スポーツ振興センターの災害共済とは大きな違いがあります。

日本スポーツ振興センターの災害共済は、過失の有無や原因を問わず、補償が受けられます。低額な掛け金(子ども1人の掛け金は350円)で、死亡事案で最大2800万円の災害給付金が出るのです。まずは、被害者の救済が優先されているといえます。

しかし、民間の保険の場合はここまではカバーできません。賠償責任保険と傷害保険がセットになっていることが多いのですが、賠償責任保険は、保育者・施設側の過失が立証されなければ補償は受けられず、傷害保険のほうは「外来の事故(偶発的な事故。疾病等は対象外)」でなければ、やはり補償を受けることはできません。保育施設等での事故の多くは第三者から見えないところで起こっており、また死亡事故の約8割は午睡中の事故です。明らかに不自然な事故であっても、これらを明確に立証することが困難になるケースは多いのです。