この業者を信頼しても大丈夫か? 先方の本当の予算はいくらか――。相手の心を読み解くスキルを、世界三大コンサルティングファームで研鑽を積んだトップビジネスマンが公開。「上司・部下篇」「顧客・取引先篇」と、相手別、状況別にお届けする。

◎顧客・取引先篇「売り上げ倍増、コスト半減」の心理交渉【1】

ウェルネス・アリーナ社長 梶川貴子氏

営業や購買、人材の引き抜き、会社と会社の提携話……。自社の利益を背負いつつ交渉のテーブルに臨むとき、注意しなければいけないことは何だろう。表向きの会話や書面を検討することはもちろん、そこには表れない相手側の「本音」を推し量るとか、うまく引き出すことも、重要な仕事の一つである。

こうした「見抜く」技術を意識的に取り入れているのが、超一流のビジネスパーソンだ。交渉相手の一言半句や身振り手振り、提供される情報の質。そういった小さな事実から、隠された本音や条件を読み取るのだ。

彼らが注目するのは、たとえば次のようなポイントである。

ボストン・コンサルティング・グループ(以下BCG)出身で、現在はホテルでのスパ運営などを手がける梶川貴子ウェルネス・アリーナ社長が一端を明かす。

「その話題を振ったときに、身を乗り出すかどうか。目が輝くかどうか。メモを取るスピードが速いか遅いか。資料をめくりながら、うんうんと軽快にうなずいているか、耳を掻きながらうーんと黙ってしまうか。相手の出席者がどのような反応を示すかで、そのプランへの賛同の度合いがわかりますし、ある程度は抱えている課題の質も推測できます」

アフリカの小学校に給食費用を補助する活動を続けているNPO法人TABLE FOR TWO International(以下TFT)の小暮真久代表はマッキンゼー・アンド・カンパニー(以下マッキンゼー)の出身だ。援助を求める学校関係者が信頼できる相手かどうかを見極めるには、「レスポンスのスピードや、どれだけ丁寧に資料を作ってくるかを参考にします。費目別にきちんとした見積もりを出してくるところは、信頼に値します」。

今回の取材では、その他たくさんの「注目すべきポイント」を聞き出すことができた。以下、テーマごとに詳しく見ていこう。