治療の翌日には歩くことも可能

手術ができない場合、局所療法や肝動脈塞栓療法が選択されますが、いずれにしても再発を早期に発見し有効な治療を繰り返し行うことが肝臓がんでは重要です。そうしたなか、近年注目されているのがラジオ波焼灼術です。もともとアメリカのベンチャー企業が開発した治療法ですが、私は1995年から注目し、99年から本格的な治療を始めました。

ラジオ波焼灼術は、ラジオ波を使って熱を発生させ、がんを焼き殺すという治療法です。ラジオ波とは電気メスなどに使用されるのと同じ500キロヘルツ前後の高周波のことで、集束すると抵抗熱を発する性質があります。ラジオ波焼灼術では局所麻酔で皮膚を2~3ミリメートル切開し、超音波画像でがんのある場所や大きさを確認しながら、径1.5ミリメートルの電極針をがんに到達させて通電します。すると電極針の周囲の温度は約100度に上昇し、腫瘍を焼くことができます。

ラジオ波焼灼術の一般的な適応はがんが3センチメートル以下かつ3個以下ですが、その条件を超えていても、患者さんが治療を希望し、全身の状態がよければ、治療が可能です。全身麻酔や開腹手術が不要なため、肝硬変患者や高齢者でも治療はできます。1カ所の焼灼時間は3~12分間で、病変が大きければ電極針を何カ所かに挿入して全体を焼きます。治療時間は30分~2時間。治療が終わって4時間は絶対安静ですが、その後は食事ができ、翌日には歩行も可能です。外科手術に比べて患者さんの負担が軽く、早期に日常生活に戻れます。原発性肝臓がんの患者さんを対象にした全国調査では、ラジオ波焼灼術の5年生存率は56.3%で、肝切除の54.2%と同水準でした。