市場が小さいほど、学歴の価値が重くなる

来日した時は、2年ほど滞在した後、イタリアに帰るつもりだったようだ。総合商社の子会社でスポーツ用品の販売促進をしたり、イタリアのメーカーの東アジア担当として輸入販売業務に関わったりした。

この間、日本では、学歴が重要な意味を持つと感じ取ったようだ。

「少なくとも、イタリアよりは学歴が社会の隅々に浸透しています。特に小さな市場では、意味が深い。例えば、小さなスポーツ店がありますね。店長やオーナーが大学の体育会でスキーをしていたこともあり、その後輩が社員として働いているケースがあります。店長と同じ大学のOBたちも、お客さんとして訪れます。

ここには、学歴を中心としたコミュニティーが出来上がっているのです。大きな市場になると、このようなコントールはできなくなるかもしれません。一方で、市場が小さくなるほどに、学歴の価値が依然として高いと思います。逆にいえば、日本は市場が大きくなり、飽和していますから、学歴の意味が変わりつつあるのです。その意味でも、厳しい時代になっています」

2007年から、アイ・シー・ジャパンの代表取締役を務める。現在、社員は13人ほど。すべて正社員として雇う。新卒や中途の採用試験で、学歴を重視することはないという。何よりも、直感を大切にしているようだ。

「友人や知人などから紹介があり、当社で働きたいと願う人と食事などをします。この場で、この人とは一緒に働くことができないと思った場合は、面接のステージに進めることはしません。私が大切にするのは、学歴よりも直感です。

その人の第一印象には、学歴以上のものがあります。小さな会社で毎日、顔を合わせるのですから、そのあたりはかなり重視します。学歴が高くとも、チームワークを踏まえて仕事ができない人は雇わないようにしているのです。

面接では、私と一緒に事業部長が同席します。部長がNOといえば、内定を出しません。事業部長が承諾しないならば、入社してもうまくいかない可能性が高いのです。その社員の直属上司になるのですから。たとえ入社しても、社員にとって気の毒なことになります。私は現場の判断を無視して、強引にねじこむことはしません」

さらに、“会社のバランス”という言葉を使い、説明をする。

「私だけがその人に好感をもっても、採用はうまくはいきません。会社は組織ですから、入社後もそれぞれの部署の責任者や社員とのバランスが大切なのです。アンバランスでは、社員は長く定着しません」