空撮は資料性、記録性が高い

鉄道写真は、カタログ写真のようにカッチリと車両を撮影したり、四季折々の風景を走る列車を美しく表現したり、多くの表現方法がある。山やビルから見下ろして俯瞰する撮影もメジャーである。

そこに空撮というスパイスが加わることで、空を飛べない人間が鳥の目線を手に入れ、より鉄道の魅力が深まるのである。例えば線路の配置や峠道のスイッチバックが一目瞭然だったり、車両屋根のディティール、街と駅の配置などなど、様々な情報が鳥瞰図になって再現されるのだ。

ときには精巧なジオラマを見ている錯覚にも陥るが、鉄道ジオラマを見る視線の角度が、私の空撮鉄道写真では大切である。模型に携わっていたからなのだろう。被写体のディティールはもとより、その周囲の生活感も感じられる適度な距離感が好きなのだ。もっとも具体的な距離はと聞かれても、そのときで撮影条件は異なるから一概には言えないが。

私の空撮鉄道写真は「空鉄」という表現を使う。もちろん造語である。空撮で捉えた鉄道写真、それを端的に表現するために、空と鉄を拝借した。この言葉自体は私が考えるよりも前にあったようで、飛行機と鉄道が好きだからという意味合いもあるそうだ。私も飛行機と鉄道は骨の髄まで好きである。「空鉄」という言葉には縁があったのかなと思う。

一般的に空撮は資料性、記録性が高い。公的な資料にも使われるし、地形図などの測量でも空撮は大活躍している。空鉄でもこの要素は重要だ。ネーミングはライトではあるが、一葉の写真には撮影時の状況が克明に記録されているのである。

とくに都市は新陳代謝が激しい。すぐ再開発されてちょっと前の姿は思い出せない。品川駅北側の車両基地の線路が統廃合される姿、これから変貌する渋谷駅。空撮で克明に表現することで後世の資料ともなるのだ。

全国にはまだまだ興味深い鉄道スポットがある。私はまだまだ駆け出しだが、全国の鉄道を撮る勢いでこれからも空鉄を撮り続けていきたい。

(吉永陽一=写真)
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