鳥の目になって鉄道を撮りたい

人間は空を飛べない。が、長い歴史を経て飛行機を発明し、鳥の世界をわが目で見ることができた。

京都駅西側にある梅小路蒸気機関車館は既存の機関区を活かして誕生したSL博物館。

旅客機が庶民でも乗れる時代に生まれた私は、幼少期から鉄道が好きだった。飛行機も好きだった。いま思い返せば、飛行機に乗って自由気ままに空を飛びたいという憧れも強かったのだろう。

高校生の頃はいわゆる「撮り鉄」で、山からの俯瞰撮影にも挑戦していた。ちょうどそのとき、鉄道趣味誌で掲載されていた鉄道空撮写真に釘付けとなった。空撮という存在は知っていたが、ヘリコプターや小型機から鉄道を撮るという世界観があるのかと心の底から驚き、そしていつかは憧れた空の世界で鉄道空撮を撮ってみたいと思っていた。

やがて鉄道写真から「写真」の道へと進むべく大阪芸術大学写真学科へ進学し、いったんは空撮のことを忘れていた。卒業後は紆余曲折を経て、模型製作が得意だからという理由で建築模型の世界へと挑戦したものの、やはり趣味と仕事では違った。

さてこのままやっていけるのかと悩んでいたところ、会社が不動産などの空撮写真を資料にしていた関係で、再び空撮と出会うこととなった。

「これだ。高校の頃の憧れを形にするべきではないのか」

建築模型の世界から途中下車し、片っ端から空撮会社と連絡を取り、学校の人文字撮影をする会社でフリーランスとして働かせてもらえることとなった。

空撮スキルを学び、自分一人で撮影をこなしてくると心に余裕が生まれてくる。高校時代に感銘を受けた鉄道空撮に挑戦し、自分ながらの世界を作っていこうと決心した。

それから約8年、気づけば全国の鉄道スポットを空撮していた。なぜそこまで空撮にこだわるのか。それはやはり、鳥の目になって鉄道を撮りたい、幼少期に思っていた空を飛びたいという気持ちが強いからだろう。