保険の持つ「落とし穴」とは

日本では国民皆保険制度が機能しているため、保険に詳しい識者ほど医療保険を否定する。『医療保険はすぐやめなさい』の著者でもあるファイナンシャル・プランナーの内藤眞弓氏は、医療保険には「落とし穴」があるという。

年齢が若いうちは元気でも、高齢になれば病気にかかりやすくなる。入院もする。そのときに備えて、保険料が安い若いときに終身保障の医療保険に加入して備えておきたい。多くの人はそう考える。一方で、現在販売されている医療保険は、入院や手術をベースに構成されている。前提となる医療技術は当然、現時点のものである。以前は給付金が受け取れるのは入院5日目からのタイプが多かったが、最近は日帰り入院や入院前後の通院にも対応している。それでも「入院」が必須である。それなのに医療技術は年々進歩し、入院させない治療が増えている。

「保険は過去のデータをもとに商品開発をするので、どうしても後追いになってしまいます。そのため現時点でもすでに実情に合っていない保険が、将来役に立つと考えること自体がおかしいのです」(内藤氏)

保険料が安い若いときに加入すると、30年後には保障が現状に合わなくなっている可能性が高い。医療技術や医療制度の方向性を見通せる年齢まで待って加入すると、保険料が高い。どちらの道を進んでも落とし穴が待ち受ける。

では落とし穴がない第三の道はないのだろうか。内藤さんの考えはこうだ。

「保険に対する共通理解は、保険は仕方なく加入する商品ということです。保険に入れば病気やケガのないバラ色の未来がひらけるなんてありえないですよね。どんな保険でも、突き詰めれば所定の条件を満たしたら現金がもらえるという仕組み。ということは、それだけの現金が手元にあれば、保険は不要ということになりますね」