ここまで書くと「選挙は政党が掲げる政策への支持・不支持である投票によって決まるのではないか」という疑問をもつかもしれない。しかし、実際には約半数の選挙区の当落結果は、選挙前から決まっている。これは驚くべき事ではない。アメリカの大統領選挙でも49の選挙区のうち結果が変わるのは八から12の選挙区に過ぎない。そのほかの選挙区は、民主党と共和党のどちらがとるかはいつも決まっている。

各政党の政策に違いがあるのかも疑問だ。自民党内でも金融政策、改憲、消費税などで相当見解の違いがある。いくつかのイシューについては民主党の一部議員の方が安倍首相の考えに近いとすらいえる。(※1)

さらにいえば、有権者が政策で政党を選んでいるかも怪しい。米ダートマス大学の堀内勇作准教授らは、政策を自動車などのスペックと同じように考えて、マーケティングでよく用いられる「コンジョイント分析」によって、政策支持と政党支持の関連の分析を試みているが、政党公約との整合性が十分とは言えないようだ。結局、二大政党制を担うはずだった自民党と民主党の政策差異は有権者には認知できなくなっている。

言い換えれば、「政策のコモディティ化」が進んでいるのだ。一方、政策を大きく差別化している日本共産党は比例得票を20%ほど増やしたが、今後ともニッチなプレイヤーに留まるだろう。以上を踏まえると、今回の選挙は、「自公で3分の2以上」にはなるが「自民単独で3分の2には達しない」という結果が、最初から決まっていた選挙だった。

それでは今回の選挙の意味はどこにあったのか。私は、現実的にはもう一つの選挙がより重要になってくると考えている。それは1月18日に行われる民主党代表選挙である。今回、自民党は、民主党幹部を狙い撃ちして、幹部の派遣や予算の配分を行ったことが報道されている。その典型例が、民主党の党首である海江田万里氏だ。