ところが、慎太郎が出馬する以上、比例順位で山田が慎太郎より上位に行くことは党支持者の反発を招くために困難である。前出のAは語る。

「山田は東京8区での立候補を、慎太郎にちらつかせた。慎太郎は、伸晃かわいさで、比例順位最下位での立候補を受諾する。この理由を『若い議員の議席獲得のために、石原慎太郎が落選覚悟で比例最下位に回った』との美談に仕立てたのだ」

果たして、次世代の党は東京ブロック比例順位で、山田よりも慎太郎を下位に並べることになった。選挙情勢が劣勢だった次世代の党にとってかなり比例順位が上でないと当選はおぼつかない。しかし、次世代の党は、東京以外の比例ブロックで、特定の人物だけを1位にするような順位づけは行っていない。今回次世代の党から出馬し、落選した候補者Bは怒る。

「山田は東京ブロック内の重複立候補者に対し、慎太郎以外は比例名簿の順位は同一であることを約束していた。一方、山田を信用しない他の候補者たちは、約束を履行するよう党首の平沼赳夫に要望書を提出した。大方の予想通り、山田は発言を翻し、東京ブロックで自分の比例順位を1位にした。この行為は絶対許せない」

比例で当選を増やすために行うべきことは、票を上積みできる知名度の高い人物を東京で立候補させることである。そこで白羽の矢が立ったのが、田母神だ。田母神は都知事選では、千代田区や中央区など都心部での得票が高かった。にもかかわらず、田母神を支持基盤の弱い東京12区(北区、足立区)で、わざわざ公明党議員にぶつけ争点化しようとした。これは反創価学会の宗教団体や保守層からの比例票得票を狙ったものである。

もし本気で公明党と戦う姿勢を国民に見せたいのであれば、田母神の東京ブロックの比例優遇をすることも可能だったが、それはなされなかった。次世代の党の選対関係者Cは語る。

「結局、田母神は『票集めが目的で使い捨て』にされただけだ。田母神の立候補に異を唱えたのは、実は、盟友とされる慎太郎である。なぜなら、公明党が伸晃、宏高(慎太郎の三男)の支援をしないと言い出したからだ。公明党の恫喝に屈した慎太郎は、田母神の立候補を取り下げるために、奔走する。11月27日の党都連大会で、田母神の公認が発表される予定であったが、慎太郎の指示で急きょ見送られた」