日本の美術館の多くは、道路のレベルから、立派な階段を上って入っていく形になっています。また、長い廊下があったり、大きな壁が待ち受けていたり、ちょっと仰々しいですね。美術館というものが権威的であるのは多分に建築物によるところが大きいかもしれません。天井が高く、展示スペースが広く、吹き抜けになっている展示室もよく見受けられます。

それと比較するとかなり見劣りがするのがアーティスト達のアトリエです。特に東京は家賃が高いこともあって、多くのアーティストは都心から遠く離れた場所の1DKとか2DKに住んで、自分で自宅を改造してアトリエにしています。狭いアトリエでは大きな作品を作るのは難しいので、中くらいか小さい作品を制作し、大きな作品は郊外に数人で借りている作業所で作ったりします。最終的に大きな作品を完成させ、展示のために美術館に搬入した時に、初めて自分の作品の全容を見たという、笑うに笑えない話があるのですが、それが日本人アーティスト達の現状です。

中国では、成功したアーティスト達のアトリエはまるで体育館のように広く、スタッフも大勢いて、日夜、大作を制作しています。中国の現代アートは絵画作品でもサイズが大きいのが特徴的です。それは住宅環境もあるでしょうが、最近は、会社のオフィスに現代アートを飾ることがトレンドになっていることも理由の1つのようです。しかし、ここには大きなアート戦略というものが隠されています。

ロン・ミュエクによる巨大な少年像
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ロン・ミュエクによる巨大な少年像

長年、大規模国際展を見続けてきてわかったことがあります。現代アートの展示で必ず成功するやり方があるのです。必勝法です。それは、作品の大きさをヒューマンスケールからかけ離れたサイズに巨大化すること、あるいは膨大な数にすること、その2つです。

たとえば、2003年にヴェネチアビエンナーレの企画展で衝撃的な世界デビューをしたロン・ミュエク(Ron Mueck)。彼の作品はリアルな皮膚としぐさで大きさを極端に大きくしたり、小さくしたりする作風なのですが、その時は造船所跡地の展示会場の入口に、巨大になった少年がしゃがんでいる作品で観客の度肝を抜きました。