続く逆風を「奇貨」として取り込んだ男

西武ホールディングス取締役 上席執行役員、総合企画本部経営企画部長 兼 第二事業戦略室長 西井知之氏●2009年4月にみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)から出向、プリンスホテルに出向し、総合企画部長に。10年西武ホールディングス入社。

西武グループが苦境に追い込まれた09年4月、みずほフィナンシャルグループからプリンスホテルに総合企画部長として出向してきたのが、西武HDの現・総合企画本部経営企画部長兼第二事業戦略室長で取締役上席執行役員の西井知之だ。

「リーマンショックで受けた打撃は大きかった。09年度には売上高がグループ全体で1200億円、ホテル事業だけでも190億円減少しました。当時はホテル事業だけで1680億円ぐらいの売上高でしたから、そこから190億円の減少は相当厳しかった」と西井は当時を振り返る。

「『もっと売り上げを伸ばせ』と号令をかけ、同時に利益も上げなければならない。ところが当時のプリンスホテルは『峻別と集中』が経営再建の最大の課題で、現場のオペレーションにまで十分改革ができていなかった。現場は売上高にばかり目がいき、収益性が意識されていなかったのです。極端な割引で稼働率を上げようとしたり、採算度外視で食材を提供していたこともあった。それぞれのホテルが独自に動いていたため、本社が一括してコントロールすることが難しい状態でした」

西井をはじめとしたプリンスホテルの企画部門が毎週違う事業所に行き、一つ一つのコスト構造を細かくチェックし、無駄をなくすように指導して回った。「数字を見ながら、『客室単価があまり良くない現状で、新聞を一律で入れるのはどうか』とか、そういった会話をしていくことで、従業員にもコスト意識が生まれてきたのです」。

さらに西井は、宿泊単価と需要をコントロールし、利益を最大限にするためにレベニューマネジメントにも力を入れる。さまざまなデータから需要を予測し、最適な時期に最適な価格を設定し、一室あたりの客室売上高の最大化を図るのがレベニューマネジメント。曜日や季節も加味しながら、価格設定をしていく必要がある。