「等身大精神の危機」とは

この事件を取り上げたとき、私は「等身大精神の危機」という言葉を使った。かつてエコロジーの世界で、「等身大の技術」ということが言われたけれど、それはたとえば、大型船でマグロを一網打尽にするのではなく、食べるに必要な分だけ一本釣りしながら自然のおすそわけにあずかるというような共生の知恵が必要だという主張だった。技術がまだ「道具(等身大の技術)」の段階では、資源の枯渇とか環境汚染という問題は生じなかったわけである。

技術が人間の肉体的機能の拡大をもたらしたとすれば、コンピュータは人間の精神的機能の拡大をもたらす。だからコンピュータやインターネットは人間の善意も悪意も増幅するし、人間の弱点もまた拡大される。

大事なのは、コンピュータという精神機能拡張の道具が、私たちを途方もない世界につれて行くことへの認識であり、その対策を立てることが必要になっている。産業社会は人間の肉体機能を拡大する道具の発達史でもあり、鉄道、車、テレビなどが次々に開発され、私たちは便利な生活を送れるようになったが、それだけ個人の肉体の能力は衰えた。

コンピュータやインターネットも経済を発達させ、生活を便利にもしたけれど、精神のあり方に大きな混乱を与えている。

私たちは肉体の衰えをエクササイズで補っているように、精神の危機を補う何らかの方策を考えなくてはいけないというのが、サイバーリテラシー・プリンシプル(16)の意味である。

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