データでわかったアプローチの重要性

新たな指標を使った分析でもうひとつ明らかになったのは、プロとアマチュアのスコアの差のうち、およそ2/3はカップまで100ヤード以上の地点からのショットによるということだ。「稼いだ打数」という一貫性のある指標を通して見ると、ロングゲーム全般、特にアプローチが重要であるとわかった。パッティングやティーショットの達人が名ゴルファーとは限らないが、アプローチの達人は名ゴルファーである可能性が高い。

例として、世界一のパットの達人だと思われるがまったく無名のグレッグ・ワードと、世界一の飛ばし屋、ジェイソン・ザバックを取り上げよう。ワードは2002年にプロフェッショナルパターズアソシエーション(PPA)の殿堂入りを果たし、PPAプレーヤーオブザディケイドを2回獲得した。ザバックは世界ドラコン選手権で5回優勝を飾り、2003年にはロングドライバーズオブアメリカの殿堂入りを果たしている。ドライバーショットはコンスタントに400ヤードを超え、大会で使われる40~50ヤードのフェアウェイ幅に収まる程度には真っすぐ飛ぶ。にもかかわらず、2人とも他のショットは一流とは言い難く、プロ並みのスコアが出せるわけでもない。ワードもザバックも、仮にPGAツアーに挑戦したとしても優勝の見込みはまずない。

一方で、もし150~200ヤードのアプローチの世界選手権があれば、その優勝者はトップクラスのプロツアーでも勝負できるだろう。こうしたショットがうまければ、PGAツアーでスコアを大きく稼げる。こうしたショットの達人になるには、スイングの再現性を高めて、飛距離、方向性、弾道、スピン量をコントロールし、フェアウェイからでもラフからでもボールをカップに寄せなければならない。150~200ヤードのショットに適したスイングを身につけているゴルファーは、たいていもっと短いショットももっと長いショットもうまい。

2004~2012年のPGAツアーで150~200ヤードの距離が最もうまかった選手はタイガー・ウッズである。タイガーはアプローチをPGAツアーの平均より3~4フィートカップに寄せていて、そのおかげで1ラウンドあたり1.3打を稼いでいる。仮にタイガーがアプローチ以外のすべてのショットがツアー平均並みだったとしても、PGAツアーで十指に入る選手になれただろう。アプローチはそれほどまでに重要なのである。

マーク・ブローディ Mark Broadie
コロンビア大学ビジネススクール教授。専門の数量ファイナンスをゴルフのスコア分析に応用した新指標がゴルフ界で注目されている。全米ゴルフ協会ハンディキャップ調査チームのメンバー。伝統あるニューヨーク州ペルハムカントリークラブの元クラブチャンピオンの実績がある。
(訳=吉田晋治)