【J】咄嗟に口をついて出てくる言葉で思い出したんだけれど、かつて広島カープで背番号55番の赤ゴジラこと嶋重宣選手が苦節何年、年俸も数百万ぐらいだったのが突然、大活躍した年があって、アナウンサーが「嶋選手、大ブレークしましたね」と言ったの。そうしたら解説の大下剛史(元広島)が、「うーん、その『大ブレーク』という言葉だけは使ってほしくなかった」って言ったんですよ。ちょっとシーンとしましてね、すると、もう1人の解説者の西田真二(元広島)が「うん、ブレークは使ってほしくなかった」って。

【GO】乗るんだ(笑)。

【J】その後の実況が大人しくなっちゃいました。

【GO】いけない言葉じゃないじゃないですか、全然。

【J】いや、でもね、「大ブレーク」っていうのが軽いんだろうね。「そんな言葉じゃないよ、彼の人生は」という抗議だと思うんですよ。

【GO】ああ、そうか。昔、「週刊プロレス」のターザン山本から編集長が交代して、表紙のコピーを書く人も代わったんですよ。それが、「ブレークしようぜ!」っていうタイトルで、「軽っ」と思ったんです。

【J】それだね。「ブレーク」という言葉では人がついてこないってことだよ。「みなさん、この会社をブレークさせましょう」では。

【GO】「ブレークしようぜ」じゃ、「よし、するぞ」とはならないですね。

杉作J太郎(すぎさく・じぇいたろう)
1961年生まれ。現在は現代アートでカジュアル書道という新分野を開拓。著書に『恋と股間』『応答せよ巨大ロボット、ジェノバ』ほか。

吉田 豪
(よしだ・ごう)
1970年生まれ。綿密な事前調査に定評のある「プロ」インタビュアー。タレント本収集家としても有名。著書に『吉田豪の喋る!!道場破り』『元アイドル!!』ほか。
(遠藤 成=構成 スタジオ108=写真)
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