ヒアリングをすると、介護の現場が抱えるさまざまな問題点が浮かび上がる。だが、パッドの使い方次第で改善できる問題も多いという。

「右側臥位で寝ると、どうしても尿が右側から漏れてしまいますが、漏れたからと右側にパッドを付け、今度は左から漏れちゃったといって左にパッドを付け、仮に3枚入れたとしても、漏れるときには漏れる。しかし、パッドにはいろいろな形があるので、適切なものを選んで正しい使い方をすれば、1枚でも防げるようになるんです」

紙おむつの交換回数が減ればコストは下がり、ゴミも減る。だが、誰もがそれを歓迎するとは限らない。できるだけ頻繁に紙おむつを交換するほうが入所者のため。そう考える施設も少なくない。

「『ウチは毎日8回交換している』という施設もあります。ただ、それを否定してしまうと話はそこで終わってしまう。口もきいてくれなくなりますから(笑)、とにかく現状について詳しくお聞きします」。考え方が違っていても、必ず困っていることはあるはずなので、それを尋ねる。すると、「肌トラブルの問題があるから」とか「尿が漏れた状態が続くのは嫌でしょう」という理由で交換回数が多いことがわかってくる。「そうしたら、『いまは昔と違ってパッドにはポリマーが入っていて吸収力が高いし肌にも優しい。リウエット(尿の戻り)もないんですよ』とご提案できるわけです」。

若い頃、川崎はこんな失敗を経験した。「商品サンプルを見たいから持ってきて」。ある病院の看護部長に言われて、いくつものサイズの中から一番出荷量の多いMとLサイズを持参した川崎に、先方の反応は冷たかった。どういった患者にどれが使えるかを知りたかったのに、MとLだけでは検討できない。そう告げられたのだ。

「これは、相手が何を求めていて、自分がどういう事前準備をすればいいかを把握できていなかったために起きたミス。こうしたミスがあると、先方との信頼関係を築けない。考えて行動することの必要性を学びました」