目標は、無理をしないこと

今から振り返ると、子育ても仕事も同じように、自分は目の前にあることを夢中になってやってきただけなんだ、という思いがあります。そのなかで、今後の課題として感じているのは、人に仕事を任せていくやり方を勉強していくことですね。幸運にも会社派遣でMOT(Management of Technology)に通っているところなんです。プレーヤーからマネジャーになったいま、自分の持っているこれまでの経験値を棚卸しして、バラバラになっているその経験をアカデミックに統合する。そうして経営やマネジメントの手法を論理的に語れるようになることが、次のステップだと考えているからです。

その中で特に心がけていきたいのは、決して無理をしないこと。私自身は全く意識していなかったのですが、女性の部長職は初めてということもあって、この役職について以来、社内の後輩たちから「宇佐美さんが道ですからね」と言われるようになったんです。これは私にとって、思わぬ責任を感じる事態でした。

だからこそ、無理をして「宇佐美さんだからやれている」と周りから思われるようなことを、してはならないと強く思うようになったんですね。この仕事が私じゃなくてもできることを示していくことも、次の世代への自分の役割。そのためにはなるべく無理をせず、等身大でやれることを精いっぱいやる。そんな姿勢が大切だと思っているんです。

●手放せない仕事道具
メジャーと三角スケール……打合せのときに建築スタッフが三角スケールで図面を測っている姿がかっこよくて、憧れて持つようになりました。疑問を持った時にすぐに測れるので、仕事もはかどる必需品です。

●ストレス発散法
泳ぐ…
小さいころから泳いでいたので、週に1回は泳がないと体調が悪くなる。

●好きな言葉
「空を見るゆとり」……女子高時代の体育祭のスローガン。ものごとがうまくいっていないときって、不思議と下ばかり見ているんです。空を見るくらいの心のゆとりを持っていないと、平常心は保てない。朝通勤のときに、「空を見るゆとり」とつぶやいて、晴れた空を見上げると、今日も頑張るぞ、と思えるものです。

野村不動産 都市開発事業本部 ビルディング営業二部 宇佐美直子(うさみ・なおこ)
1993年野村不動産入社。分譲マンションの販売を経験後、99年ビルディング営業部に異動。2000年に第1子、02年に第2子を出産。09年よりPMOシリーズに携わり、13年よりビルディング営業2部長に就任。同社初の女性部長となる。

稲泉 連=構成 向井 渉=撮影