女性をハンデに感じたことはない

でも、そのことをハンデだと感じたことは実はないんですよ。むしろ「そう思うでしょう? アルバイトじゃないんですよ」と笑って、話の取っかかりを作る。きちんと丁寧にお話をしていけば、お客様には必ず信頼してもらえるものです。最初の反応のギャップを楽しむくらいの気持ちに徐々になっていきました。

それに住宅の営業では、自分の体験がとても役に立つんです。私は入社3年目に友人の紹介で出会ったスポーツ紙の記者の夫と結婚し、マンションを購入しました。ご夫婦やこれから結婚しようというカップルの方に、自分がその際にどういう基準で物件を選んだかなどを伝える。セールスマンのトーク集ではない実体験に基づいた話をきっかけに、お客様の目が真剣になっていくという体験を何度もしたものです。

入社して5年目の頃には、ファミリー層向けではない2LDKの多いマンションを売るために、「女性による女性のためのマンション購入講座」というセミナーを企画したこともありました。

これは仕事の中で実感していったのですが、当時のモデルルームには女性が1人で気安く入れないイメージがあったんです。部屋の紹介が終わると奥から強面のおじさんが出てきて、強引に営業されるんじゃないかという不安がある。そこで「ご安心ください、この時間は男性営業マンは1人も出てきませんから」とセミナーを開いたんです。

今では野村不動産のプラウドシリーズにたくさんの女性がかかわっているように、本来、住宅の販売と女性社員は相性がいいんです。お客様もご夫婦なら半分は奥様が権限を持っています。だから、「あのご夫婦は奥様がキーだから、宇佐美いってくれ」と現場では女性であることが役に立つこともありました。

野村不動産 都市開発事業本部 ビルディング営業二部 宇佐美直子(うさみ・なおこ)
1993年野村不動産入社。分譲マンションの販売を経験後、99年ビルディング営業部に異動。2000年に第1子、02年に第2子を出産。09年よりPMOシリーズに携わり、13年よりビルディング営業2部長に就任。同社初の女性部長となる。

稲泉 連=構成 向井 渉=撮影