「最近は知的財産権問題が注目され弁理士の活躍の場も増えていますが、特許出願数の多い大企業などの顧客は既存の特許事務所と契約しているので、資格をとってもすぐに独立開業することはまずできません。若手なら事務所につとめてキャリアアップをはかるのもいいでしょうが、中年以降はそれも難しいと思います。また、全国で商店街が廃れていくなかでは、税理士の仕事も右肩上がりとはいえません」

逆に「独立しても仕事に困ることがない穴場的な資格」と評価するのが、不動産鑑定士だ。こんな事情がある。

「自治体の固定資産税評価など公的な仕事を割り振ってもらえるからです。弁護士には国選弁護人という制度がありますが、それ以外に国や自治体の仕事が回ってくる資格は不動産鑑定士しかありません。しかも地方には有資格者の空白地域がありますから、Uターン、Iターン開業も可能なのです」

もっとも、総じて「資格だけでは食えない時代になってきた」というのが上田氏の認識である。

「その代わり『資格』として体系化される前のスキルの部分が、その人のキャリアと一体化して評価されるようになっています。そもそも新しい技術やスキルが生まれ、普及していく段階では資格など存在していません。たとえばウェブなどITのスキルは資格ができる以前に、どんどん変化し高度化していきます。ITに限らずビジネスの先端の部分では、常に資格よりスキルが先行しているのです」

資格よりもスキル。変化の激しい時代であるだけに、その傾向はあらゆる業種、あらゆる職種に当てはまる。

そのなかで上田氏が注目しているのは「現状では不況下の事業再編と付加価値販売型の仕事」だという。

売り上げ急減を受けて、多くの中小企業が事業の再編成を進めている。それにはM&Aや事業の切り離しなどを含む“大手術”が必要だが、企業内部でやりきるのは難しい。そこで税理士や中小企業診断士などの専門家がコンサルタントとして計画立案や財務処理に当たっているが、「これだけ大きな仕事は資格があるだけでは歯が立たない」。資格を持ち、企業再生のスキルを身につけた人材なら「独立しても十分にやっていける」というのだ。

一方、付加価値販売型というのは、小売店の担当者が野菜ソムリエやインテリアコーディネーター、家電製品アドバイザーなどの民間資格をとり、より深みのあるコンサルティング型のセールスを実践するということだ。

逆に「見通しが暗い」と見るのはTOEIC、中国語検定など外国語系の資格やスキルだ。一見すると不可解な現象だが、上田氏によれば次のような事情があるという。