直すのが一番難しいのは“気づかないクセ”

一番直すのが難しいクセは? と伺うと、こんな答えが返ってきた。

「一番難しいのは“自分が気付かないクセ”です。自分にどういうクセがあるか、ご本人が知らないケースがほとんどです。そこに気づいていただくことから始めます」

たとえば、よくあるのは「えー」「あー」といった音を頻繁に出してしまう、目をふせる、手をもじもじと動かしてしまう……など。実は、「これがクセだ」と気づくだけで、その7割は改善される。そこからトレーニングをすることであと2割増しになる。つまり、9割は直せて印象も驚くほど変わるそうだ。「最後の1割はかなり手ごわいのですが、9割直った時点でほとんど気づかないくらいになります」と大森さんはいう。

では、直すのが手ごわそうな「話し方」はどうだろう。大森さんは音大を出られた声楽家でもあり、発声の修正などもアドバイスをするそうだ。

「話し下手と思っている方の6割以上は、日本語の発音が良くありません。そこをしっかり直されるだけでも、瞬く間に話し方が変わります」

日本語の母音の中でも大切な縦の母音「あ」「お」を特に強調している。

「唇は横についているから、発音しにくい音です。逆に横に口を広げる“い”や“え”は発音をしやすいのです」

特に男性は顎に力が入りがちで、顎の部分を閉じてしまうことが多い。日本語はあまり口を動かさなくても話せるために、顎をあまり意識せず、口を開かないままでも発声できてしまう。それが、滑舌のよくない話につながってしまうのだ。「あ」や「お」の縦の母音は顎を開けてクリアにすると、日本語はきれいに聞こえ、音が前に出てくるようになる。すると、「自分の声はきれいに響くんだ」「自分は話せるんだ」と自信につながるというわけだ。

最後に“自分をどんな風に伝えるか”を、自分をメディアと捉えて考えてみよう。