つらくて陰湿な女性同士のバトル

【E支店長】女性社員の間で育休後の短時間勤務の人とフルタイムの人との間で溝ができてしまうことがよくある。フルタイムの人の中には、その分をカバーしなければならず、自分だけ割を食っていると考える人が必ずいる。また、時短の人の中にも周囲に気遣いすることなく、仕事に穴を空けて帰ってしまう人もいる。ひどくなると、必要な情報を与えないとか仕事で嫌がらせをしたり、目に見えないいじめに発展し、しまいには完全に疎外されてしまう。口で批判するならまだいいけど、極めて陰湿だ。そういう事例が結構あった。

【B部長】似たようなことはうちでもあった。以前は女性社員同士で一緒になってわいわいやっていたが、仲間から1人外されて社員食堂で1人でポツンと食事をしているのをよく見かけるようになった。そのあと退職届を持ってきたんだが、どうしたのと聞くと「今の職場には私はなじめませんし、仕事と子育てを両立するのは難しい」と言われた。

【D部長】一番大変なのは上司の男性だよ。本人同士は口をきかないから上司に文句を言ってくる。「あの人は仕事のしかたがおかしい、権利ばかり主張している」と。言われたこっちは解決しようがないから、しわ寄せを受けた仕事の処理をなんとかお願いしますと頭を下げるか、自分で処理するしかない。本当に大変だよ。

【C部長】そう。短時間勤務中でも男性社員はあまり文句を言わないが、子育て中の女性社員よりも、制度が完備していないときに入社した40代の女性社員はもっときつい。以前、そんな話を女性の幹部にしたら、いきなり「あの女たち、甘えてんじゃないわよ!」とすごい剣幕で怒り始めたのには驚いたね。

【E支店長】怖いな。逆に若い女性はそういう年上の幹部クラスの女性を見て「私はあのようになりたくないわ」と考える人も多いよ。よくキャリアを目指す女性のロールモデルがいないから女性は昇進したがらないというけど、逆にバリキャリの女性を見て、あそこまで私はできないわ、と敬遠する女性も結構いる。

【B部長】集中して仕事ができるようになるには、理解ある夫がいること、そして夫が勤める会社も育児に理解がなければとても、仕事で一生懸命にやろうという気になれないだろうね。

【C部長】ある女性は、子育て中の女性はフルタイムを1日2回働いているのと同じだと言っていた。会社の仕事だけではなく、家に帰っても家事、育児に追われる日々を送っている。そうなると体力的、精神的にも強くないと務まらないだろうと思う。夫が手伝ってくれる、近くに両親がいて、母親が子育てを助けてくれるという環境がなければ難しいだろうね。実際に仕事をうまくやっている女性社員は自らそういう環境をつくって働いている人が多いね。

【E支店長】そう。仕事も家庭も2倍のパフォーマンスを発揮しようなんて相当大変だよ。復帰した女性には必ず育児のヘルプをつけなさいと言っている。夫の助けもあるが、夫が会社を休んで子育てすることを嫌がる会社も依然として多いし、できれば親兄弟がいい。何らかのヘルプがあれば、仕事にも集中しやすいからね。

(的野弘路=撮影)
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