普通の健康診断ではわからない病気の手前の“未病”段階での体の異常を見つけ出し、栄養バランスを整え直すことで、120歳長寿も夢ではない!? 驚異の検査と治療法を紹介する。
新宿溝口クリニック院長 溝口 徹氏

医療の現場でも、一般的に患者の健康回復をサポートする“脇役”と位置づけられがちな栄養だが、その医学的な効果に着目して、薬を使わずに栄養で病気を治そうという治療法が急速に広まっている。それが「オーソモレキュラー療法」で、日本における第一人者が新宿溝口クリニックの溝口徹院長だ。

溝口院長によると「オーソは英語で『整合』、モレキュラーは『分子』を指します。体内にある分子は、基本的にすべて栄養です。分子、すなわち栄養のバランスを整えていく治療法のことで、『分子整合栄養医学』とも呼ばれます」とのことだ。では、具体的にどうやって治療していくのだろう。

「慢性疾患では基本的に体内の栄養バランスの乱れが病気を引き起こします。ですから逆に栄養の体内濃度を正しく調節すれば、体の働きも正常化し、さまざまな病気が治るわけです。病気を治すのに必要な栄養の濃度のことを、オーソモレキュラーでは『至適濃度』といいます。実際に栄養を至適濃度にするのには食事だけでは難しく、サプリメントや、ときには点滴も積極的に活用します」

そもそもオーソモレキュラー療法は、1960年代に米国のライナス・ポーリング博士、カナダのエイブラム・ホッファー博士らが提唱したもの。ポーリング博士は54年にノーベル化学賞を受賞した世界的な生化学者であり、ビタミンCの研究で知られている。一方のホッファー博士は精神科医で、統合失調症に対するビタミン療法に取り組んでいた。ポーリング博士がそのビタミン療法を知り、理論を体系化したのがオーソモレキュラー療法で、68年に科学誌「サイエンス」で発表されている。現在では欧米などで広く支持されるようになっている。