どうせ買うなら、資産価値の高いマンションを購入したい。だが、物件の資産価値を決めているのはいったい何なのか。マンションライフの際立つ変貌とともに、住宅評論家 坂根康裕氏にお聞きした。
坂根康裕●さかね・やすひろ
住宅評論家。ウェブマガジン「家の時間」主宰。 オールアバウト「高級マンション」のガイドも務める。

「プレミアムマンション」という言葉に明確な定義があるわけではありませんが、本誌の読者の皆さんにとって何がプレミアムかといえば、やはり「資産価値の高い物件」ということになるでしょう。

では、資産価値をどこで判断するか。それは、利便性と将来性。交通インフラの整備や再開発などで将来、利便がよくなるエリアといったほうがわかりやすいかもしれません。それらの掛け合わせで、ここはどうかと選んでいくわけですね。

具体的には、「駅前再開発」が一つ目のキーワードとなります。

「駅近」ではなく、「駅前」が
リアルタイムなプレミアム

例えばJR立川駅。ペデストリアンデッキで駅と直結したタワーマンションは、坪単価342万円という、周囲の相場観から3割以上高い価格でも即日完売しました。驚きでしょうか。しかし冷静に見ると、1300万人超という東京の人口の3分の1が都下に暮らし、立川市はそのちょうど真ん中に位置しています。

しかも、新宿駅・東京駅までJRで一本という交通利便性、伊勢丹はじめ名だたる百貨店群、IKEAの都内初出店、広大な面積を持つ昭和記念公園……。要するに働く、学ぶ、暮らす、憩うという、いろいろな要素が全部駅周辺に集中しています。その駅に直結したマンションであれば、都心に匹敵する値段だとしても納得できるのです。すでに「駅前」というだけで、プレミアムがついています。

行政は今「コンパクトシティ」を構想していて、街の機能を集中させることでコストの抑制を図っています。このとき「駅前」は、絶好のポジションにあります。と同時に、人が集まるところは住みにくいという、従来の駅前イメージを払拭する時期なのかなとも思います。

二つ目のキーワードは、やはり「東京五輪」。有明や夢の島などに新たに関連施設の建設が計画され、環状2号線をはじめとした交通インフラの整備も進められるなど、「湾岸」エリア全体の将来性が高まっています。五輪開催が決定した直後、湾岸のマンションへの反響がより一層アップしたという事例もあります。

そして、三つ目が「羽田空港の国際化とリニア新幹線」です。京急空港線と東急多摩川線を結ぶ新空港線「蒲蒲線」はまだ構想の段階ですが、この二つを考えたときに、やはり羽田空港から品川駅、東京駅にいたるラインは利用価値が高まる可能性が高いのです。