2014年12月9日(火)

15万円騙されて痛切に知った「二択」営業の威力

ワルの経済教室【15】

PRESIDENT Online スペシャル

著者
多田 文明 ただ・ふみあき
ルポライター

キャッチセールスや悪質商法の実態に詳しいルポライター。『キャッチセールスルポ―ついていったらこうなった(文庫本)』(彩図社)『クリックしたら、こうなった』(メディアファクトリー)など、騙され体験の実況中継記事に定評がある。最新著に『あなたはこうしてだまされる 詐欺・悪徳商法100の手口』(産経新聞出版)。

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ルポライター 多田文明=文
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二極思考、対立思考は「仕事にも使える」

善か悪か、敵か味方か、白黒をはっきりつけて物事を考える方法は、よくカルト教団の思想などで見られる。これは二極思考、対立思考などとも呼ばれる。

実は、有能なビジネスパーソンはこの手法を採り入れているのだが、「正」の側面に触れる前に、「負」の側面をざっと解説しよう。

現代社会においては、物事が複雑に絡み合っており、仕事や人間関係などで対処すべき方法がわからず、悩みやストレスを抱えてしまう人は多い。

ところが、この思考ではすべての事象を白と黒の2つに分けて考えさせるので、物事の判断が楽になる。白を取るとすれば、黒の側を排除すればよいので、どっちつかずの曖昧さのなかで悩むことがなくなる。それゆえ、現代人のなかには、この思考を自らの心に取り入れることで、思い煩いから解放されたような気持ちになる人もいる。

だが、この考えは一方で危険なものにもなりうる。

たとえば、カルト教団などではこの思考を使い、相手にマインドコントロールをかけてくる。すなわち自らの教団の意向に沿う行為を善行とし、それ以外を悪行として定めて、物事をスパッと2つに割って判断させる。

となると、必然的に自らの教義に反対する人々は悪魔の側、敵とみなされ、徹底的に排除されることになり、中には、この世の法律よりも、自らの教義を優先させることで、反社会的な行動を引き起こしてしまうことにもある。過去に起きた一連のオウム事件などが、その好例であろう。

さて一方、カルト教団同様に社会問題化している悪質商法のワルたちはこの思考法をどのように使っているのであろうか。

30代の頃、俳優志望だった私の元に「芸能事務所所属のためのオーディションを行う」というダイレクトメールが届いた。参加してみた。セリフテストを受けると、数日後、「合格した!」という一報がきた。

所属契約を交わすために事務所を訪れると、契約を結ぶ段階で、事務所の男性は言った。

「入所金として、15万円がかかります」

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