社会との接点がゼロとなり、一人ぼっち化

在宅介護では当然のことながら要介護者と向き合う時間が多くなり、外に出るのは買い物ぐらいになります。話をする相手といえばケアマネージャーをはじめとする介護事業者。私の家を担当した人たちはみな、介護の質問をはじめ現状抱えている悩みなども親切に聞いてくれましたが、忙しいこともあって、そうした会話をしたがらない人も多いそうです。

逆に、利用者のなかには介護サービスの人に対しても家のことには立ち入って欲しくないと思っていてコミュニケーションを取りたがらない人がいるようですから、そうした姿勢が一概に悪いとはいえませんが。

介護は仕事にも影響を及ぼします。介護をとるか、仕事をとるかという決断を迫られるわけです。要介護者を有料老人ホームなどの施設に任せ、仕事を優先する考え方もあります。が、親への情や経済問題もあって、仕事を犠牲にしなければならない場合もある。現在では介護のために仕事を辞める介護離職者が年間10万人にものぼるそうです。離職すれば、職場の人たちとのつながりも、仕事を通した社会との接点も断たれてしまう。そうした点でも孤立するわけです。

私が父の介護をしていたのは約1カ月半と短期間だったうえ、介護サービスのスタッフとも会話をしていましたし、事情を知った近所の人たちが心配し相談にも乗ってくれました。また、仕事の方も家でできるものが多く(取材で出かけなければならない仕事は断らざるを得ませんでしたが)、なんとか介護と両立できました。

しかし、それでも介護のことで頭がいっぱいで、テレビなどで情報を得ることは少なくなって社会の出来事や流れには疎くなりましたし、人づきあいも減りました。もし介護が1年、2年と長引いたら孤立は避けられなかっただろうなと思いました。

介護をする環境としては恵まれていたと思われる私でもこうです。

周囲に知られたくないという意識から近隣の人たちとの接触を断つ。

介護サービスのスタッフともあまりコミュニケーションをとらない。

離職することで仕事関係の人たちとの接点もなくなる。

それで長期間、要介護者と向き合うだけの生活を続けていたら、完全に孤立してしまうはずです。