介護商品は「黒い袋」が、暗黙の了解

親などの身内が要介護状態になった時、その事実を「近所に知られたくない」と思う人が多いそうです。

たとえばホームヘルパーなどの介護スタッフがサービスを終えて家から出た時、近所のおばさんが寄ってきて「どなたか具合を悪くされたのですか?」といったふうに聞いてくることがよくあるとか。

プライバシーの問題でもあり、そんな時は言葉を濁して答えないのが介護サービス事業者の基本姿勢だそうです(なかには、しゃべってしまう人もいるらしいですが)。サービス利用者のなかには、そうした近所の詮索が嫌で「訪問の時は家の前にクルマを止めないで欲しい」という人がいて、クルマの停め場所に悩むことも少なくないそうです。

要介護になったご本人が「近所には知られたくない」と言っているのか、それとも家族が世間体を気にしているのか。確かに身内が要介護になることは、その家に起こった不幸な出来事であり表に出したくないという意識が働くのかもしれません。

しかし、私にはそういう「隠したい」という感覚はほとんどありませんでした。

もちろん聞かれてもいないのに、それを話したことはありませんし、親戚には余計な心配をかけたくないという思いがあり、限られた人に起こった事態を伝えただけです。が、近所で父を知る、顔見知りに会った時は事実を率直に話しました。

ウチの場合、突然父が寝たきりになり、早急に介護体制を作らなければならなかったこともあって、世間体など気にしている余裕はありませんでした。父の介護をしてくれるサービス事業者の利便性を考えた場合、家の前にクルマを停めてもらった方がいいわけです。

また、自分の考えなどを表現するライターという職業柄、内情を明らかにすることについてのハードルが一般の方よりも低いのかもしれません。

ただ、父の介護をしている間、「介護というのは周囲にあまり知られたくないことなんだな」と感じたことはありました。紙パンツや紙オムツ、尻ふき用のウェットティッシュなどの介護用品をドラッグストアに買いに行くと、通常なら透明の袋に入れるところを、中身が解からないようにした透明度のない黒い袋に入れてくれるのです。それで「介護というのは世間的には隠したいこと」と受け止めました。また、ドラッグストアがこんなところまで気を遣っているのは、さすが日本だと思いました。

ただし、親しくなった介護サービル事業者の人たちに話を聞くと、そうした「隠したい」という意識を持つのは仕方がないけれども、怖いのはそのことによって、介護をする家庭、とくにその役割を担わされる人が「孤立すること」だそうです。