元管理職が「嘱託さん」と呼ばれる日

【60歳の定年を機に「嘱託」になり身も心も落ちてしまう人々】

65歳までの継続雇用が法で義務化されたが、それでも多くの企業は60歳定年のままだし、それ以降の雇用は「嘱託」という立場が一般的だ。給与は現役社員の7割から5割程度まで落ちることが多い。

60代の継続雇用は、妻にとっては有り難い制度であるようで、サラ川にはこんな句まである。

「定年の 延長決まり 妻元気」(うつ蝉)

このように家庭では、歓迎される継続雇用だが、当の本人の会社での居心地は必ずしも良いとは限らない。会社では、定年後の人のことを「嘱託」と呼ぶところが多い。このように「嘱託」と呼ばれてしまうと、当の本人は「あなたには期待していないよ」と言われたような気持ちになるだろう。

そもそも、この「嘱託」とは、どんな意味なのだろうか? 辞書をひいてみたら、次のように載っていた。

「仕事を頼んで任せること。委嘱」「正式の雇用関係や任命によらないで、ある業務に従事することを依頼すること。また、その依頼された人やその身分」

わかったような、わからないような解説である。仮に、若い社員から「嘱託さん」と呼ばれたら、どんな気分になるかと想像して欲しい。良い気分になる人は皆無のはずだ。

話は変わるが、そもそも年齢に対して持つイメージは、時代とともに随分変化してきたと思う。それを感じさせるのはサザエさんだ。お父さんの波平は、54歳という年齢で、現役の社員である。

だが、現代人の感覚からして、波平が54歳に見えるだろうか? NOだと思う。妻のフネさんが50歳だとは到底思えないだろう。サザエさんにしても24歳という若さだ。その年齢でタラちゃんがいるのだから、20歳そこそこで子供を産んだことになる。マスオさんだって28歳には見えない。

サザエさんという漫画は昭和20年代に誕生した。だから、その時代では、そんな感覚だったのだ。戦後60年以上経たのだから、もう年齢に対する感覚を一新しても良いのではなかろうか? イマドキの60代は、決して老け込んでいない。まして50代はバリバリのはずだ。