「どうして自分は行かなかったのか。子供たちのことで『明日でいい』と考えるのは、もうやめよう」

副島先生は目を泣き腫らしながら、心に誓ったという。

少年が元気だったころ、夢についてこう語りあったことがある。

「僕、学校心理士になりたいんだ」

「あれ、前は料理人になりたいと言ってなかったっけ?」

「うん、最近変わったんだ。先生、僕が大きくなったら、病気の子も安心していられる場所を一緒につくろうよ。きっと楽しいと思う」

「おう。わかった。約束だな」

少年が亡くなってから6年。副島先生は、かつて教え子と交わした約束を実行に移そうとしている。

「大阪で建設中のホスピス内に学校をつくります。1階は地元の人たちとの交流の場、2階の端に院内学級のような教室をつくる。順調なら来年秋にはスタートする予定です」

大きな夢に向かって着実に歩みを進めている副島先生。最後に、子供たちにエールを送ってくれた。

「病気の子供たちは特別な存在ではありません。入院していない“普通の子”だって、身体は健康でも、何らかの喪失感を抱いている子、ネガティブな思いになっている子はたくさんいるはずです。そうした子供たちにとって、学習することは自分を見つめるいいチャンスになる。学ぶことを通して、自分はやれるんだということをぜひ実感してほしいですね。勉強することは、誰かを幸せにする力になるんだから」

(市来朋久=撮影)
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