「人を喜ばせる」原点に立ち戻れ

企業はいまこそ「人を喜ばせる」という原点に立ち戻るべきです。単に本質論として原点回帰を訴えているわけではありません。現実問題として、営業やマーケティングよりCS向上に企業のリソースを割いたほうが、企業が生き残る確率か高まるのです。

多くの企業は自社の商品やサービスを売るために営業部隊を強化し、商品やサービスの認知度を高めるために広告宣伝活動を展開しています。これらは主に新規顧客を獲得するための施策といえます。ただ、市場が成熟している時代に、新たに顧客を掘り起こしたり、他社から顧客を奪うのは簡単なことではありません。営業やマーケティングは必要ですが、市場が拡大している時代に比べて効果性が落ちています。

成熟の時代に求められるのは、既存顧客の囲い込みと深掘りです。自社の商品やサービスを知らない人に対して、その魅力を伝えて購買行動を起こさせるまでには、越えなくてはいけないハードルがいくつもあります。一方、既存顧客は自社の商品やサービスの中身を知っているので、少なくても最初の関門は突破しています。同じ金額を売り上げるなら、自社のことを何も知らない層にアプローチするより、既存顧客に働きかけたほうがずっと簡単です。

既存顧客にリピートしてもらうための王道的なアプローチが、CSの向上です。既存顧客は自社の商品やサービスを一度経験しています。その経験が喜びをもたらすものであれば、顧客ほうから「また感動を味わいたい」と近づいてきてくれます。CSが高ければ、軽妙な営業トークや、お金がかかるマーケティング施策に精を出す必要はありません。商品やサービスを通して、顧客に喜びを感じてもらえるかどうか。既存顧客に対しては、それが最強の営業やマーケティングになります。