衆人環視のCEO選抜レース

LIXILではすでに、未来のCEO選びの前哨戦として後継者候補約60人を社内からピックアップして、エグゼクティブ・トレーニングを施している。これは、「リーダーシップとは何か」についての気づきを起こさせるトレーニングであり、今後は、トレーニングを受けた社員の成長ぶりをウオッチしていくことになる。

こうした後継者の育成において、私はかつて在籍したゼネラル・エレクトリック(GE)の人材育成の手法をお手本にしている。

GEは人材育成を事業の重要な柱のひとつと位置づけるほど、人材育成に熱心な企業である。クロトンビルという巨大なラーニング・センターを構え、長期間にわたる社員教育を行うことで知られており、次期CEOを選出するプロセスも、伝統的な方法にのっとった大変にシビアなものである。

まず、社内の45~50歳ぐらいの若手のリーダーの中から20人ほどがピックアップされ、それがやがて8人になり、3人になりというふうに徐々に絞り込まれていく。3人ほどになった段階で、彼らが次期CEO候補であることが社内に正式にアナウンスされ、衆人環視の中“最終レース”が行われることになる。

最終候補者の絞り込みまでにどのような選別が行われるかといえば、約20人の候補者全員が系列企業などで3~5年の間CEOを経験させられ、その間のパフォーマンスをウオッチされる。その後、GE本体でリーダーとしての能力をストレッチするためのビッグジョブを任され、そのプロセスと成果を評価されるのである。

私は、ジャック・ウェルチの後継者であるジェフリー・R・イメルトがこの選抜を受けている時期に間近で過ごす機会に恵まれたが、さて、何と表現したらいいか適切な表現が思い浮かばないが、彼がとてつもない試練を受けていたことだけは間違いない。

なにしろ、ジャック・ウェルチは怖いのである。あの大きな目玉でギロリと睨まれて、いきなり「君の意見は?」などと質問されると足がガタガタ震えてしまうぐらい怖い。一歩懐に踏み込んでしまえば包容力のある魅力的な人物であることがわかるのだが、ウェルチとは常に、戦いの姿勢で対峙することを強いられる。

その“怖いウェルチ”に試されている間、イメルトは必死で結果を出そうともがいていた。無論、他のライバルたちも同様だ。そして、私が見ていてつくづく大変だと思ったのは、彼らは単に結果を出すだけではなく、同時に優れたリーダーシップを発揮することも要求されていたのである。いくらいい数字を出しても、部下がついてこない人物はCEO候補から外されてしまう。まして、自分がCEOになるために部下を踏み台にしているような人物は、その事実が露呈した瞬間にレースから排除されてしまうのである。