女性が男性上司を好む理由

これらの数字は不可解だが、まず、女性が女性と一緒に働きたがる理由は2つあると思われる。一つは、セクハラなど、ジェンダー・バイアスに関連した問題からある程度守ってもらえると思うこと。もう一つは、学位を持っていない女性は概してピンクカラーの職につくが、こうした職場には明らかに女性的な雰囲気があり、男性はその雰囲気を壊すおそれがあることだ。

一方で、男性上司のほうがよいと思う女性は、ジェンダー・バイアスが女性を他の女性と対立させる職場で働いた経験があるのかもしれない。法学教授、フェリス・バトランが2010年に行った弁護士秘書に対する調査は、私自身の調査と同じく、この力学を明らかにしている。バトランは142人の弁護士秘書に聞き取り調査を行ったのだが、女性弁護士の下で働くほうがよいと答えた者は一人もいなかったのだ(重要な点は、47%はどちらでもよいと答えたのではあるが)。

多くの秘書が男性上司を好むのはなぜか。答えは単純だ。多くの法律事務所で、男性が権力の大部分を握っているからだ。ビジネスや法律などの専門的な分野では、女性は上級管理職の約10~20%を占めているにすぎない。秘書が上司の出世とともに自分も上昇したいという野心を持っているなら、女性より男性に賭けるほうが有望なのだ。これはジェンダー・バイアスが女性を他の女性と対立させる一つのパターンである。

もう一つのパターンは、女性が他の女性を固定観念で見ることから生まれる。「男性は女性より柔軟で、感情に流されにくいと思うわ」と、ある秘書は言った。別の秘書は女性弁護士を「感情的で人を貶める」と評した。女性は感情的だという固定観念は何百年も前からあるものだが、「人を貶める」とは。その上司は意地悪なだけかもしれないが、おそらくただ単に忙しいのだろう。忙しい女性は往々にして理不尽だとか刺々しいとかみなされる。高レベルの仕事は男性的なものとみなされているので、有能とみなされるためには男性的にふるまう必要があるが、やりすぎると……ご用心あれ、だ。

誰も勝者になれないこの状況は、男性の世界に溶け込みたいと思う女性と、伝統的な女性像に忠実であり続ける女性の対立を燃え立たせる。「秘書は身の回りの世話や細かい気配りなど、伝統的に女性らしい行動とされてきたことを行うよう期待されており、それに対し女性弁護士は、固定観念では男性的な行動とされることを行うものとされている。同じ空間で発生する、このジェンダーによる期待とパフォーマンスの違いを考えると、対立が生じる可能性は途方もなく大きい」と、バトランは結論づけている。実際、多くの専門職の女性が、パメラ・ベティスとナタリエ・B・アダムズが未発表の論文で「ナイス・ワーク」と呼んでいるもの、つまり細かい気配りをし、愛想よくすることを期待されていると感じている。「ナイス・ワーク」は概して時間を食ううえ、女性にとっては義務だが男性にとってはオプションだ。