なぜ好調輸出企業は利益を社員に還元する気がないか

業績好調の輸出企業はボーナスをもっと上げてもいいのではないかと思うが、じつは海外で稼いだ分を日本の従業員に還元する気はないようだ。

配当など企業が海外から受け取った「純受け取り額」は2013年度は約17兆9000億円もある。しかし、ボーナスを決めるのは海外事業を含めた連結業績ではなく、国内事業に限定した単体業績を重視するようになっているのだ。

経団連の調査(13年11月)では賞与・一時金を決める基準を「単体業績のみを判断材料にしている」に企業は36.6%、「どちらかといえば単体業績を重視する」27.3%。合計63.9%を占める。これは賃金決定の基準でもほぼ同じ比率だ。連結業績重視は14%(賃金は8.9%)にすぎない。これでは国内業績が伸びない限り、ボーナスが上がることはないのだ。

海外で稼いだ分に日本人社員も貢献していないわけではないのだが、経団連はこう主張している。

<海外の事業投資先なども含めたグループ経営が重視され、海外収益が拡大していく過程にあっても、引き続き国内従業員の貢献は決して小さくなるものではない。しかしながら、企業の売上や生産に占める海外比率が高まる中、国内従業員だけを対象とした定期昇給制度を維持していくことの合理性は、今後ますます問われることになろう。>(経団連『2014年版経営労働政策委員会報告』)。

つまり、国内の社員だけを優遇するわけにはいかないと言っているのだ。円安効果で海外事業が好調でもその恩恵は受けられない。しかも、一方では輸入原材料の高騰による物価高でサラリーマン世帯の暮らしは厳しくなる。アベノミクスの負の側面がますます拡大していく可能性もある。