有言実行、不言実行どちらもリアリスト

もちろん一流アスリートの中にも有言実行・不言実行、様々なタイプの方がいらっしゃいます。たとえば野茂英雄さんは不言実行タイプです。彼は「日本の野球の実力を証明したい」「何勝します」といった発言は、私が知る限り口にしていません。どんなときも、謙虚なままです。たとえば彼の渡米時は日本人選手の実力が未知数でした。その彼を、ある球団は、農場で藁を積んでいるピックアップトラックで迎えにきたのです。日本球界屈指の投手ならリムジンを当然と思うかもしれません。しかし彼は「迎えにきてくれただけでありがたかった」と言っています。現状を淡々と受け止め、自分の力を出し切ろう、できる限りのことをしようと思っている。胸に情熱を湛えながら、決して激高はしない。現実を見つめる目を持つリアリストだと思いました。当時、多くの野球関係者に「メジャーでなど通用するはずがない」と言われても、野茂さんが反論することがなかったのは、自分の進むべき道を信じていたからだと思います。

サッカーでは、中田英寿さんと本田圭佑選手が「有言実行」の人物と見なされていますが、彼らも自己実現を積み重ねていくリアリストだと思います。本田選手は、ブラジルワールドカップのとき、「優勝する」と勝利への執念を言葉にしました。しかし、惨憺たる結果に終わったあと、謝ることに。しかしこれはただの「ビッグマウス」ではない。本田選手は、自分を鼓舞するために言葉を使うタイプの選手だからです。彼は小学生の頃から、どんな大会に出場するときも「優勝する」「一番になります」と言い続けてきました。自分に嘘をつかず、思いをまっすぐ言葉にし、自分や周囲の目標を明確にしているのです。これも、ただの大言壮語とは異なります。