こうした取り組みを従業員はどうとらえているのか。

「早い人は2月から働いているが、“住人”に対して最近もアンケートをとった。評価は2つに分かれた」と担当者は話す。

「以前の状態に戻してほしい」という“否定的な意見”はそれなりにある。「古手の幹部には、『自分は自工(トヨタ自動車工業)、あなたは自販(トヨタ自動車販売)』といまだにいう人はいる」(トヨタ幹部)くらいなので、新しい流れへの抵抗はあって当たり前だろう。また、「例えば特定のある部品の設計者は、いつも同じ位置に集まっている。同じ種類の魚が、同じ場所に集まるように」(オフィスの関係者)という現象も見られるそうだ。

前出の企画担当者は「お手本にしたオフィスを、そのまま拡大した部分もある。このため、例えばシンキングルームを使うのに、100メートル以上もの移動を強いられるという意見も出た。レイアウトを場合によっては変えるし、新設する九階に生かしたい。一体開発オフィスは完成型ではなく、いまは進化している最中」と話す。

一方、肯定的な意見が多かったのが「ミニSEルーム」だ。2月当初にはほとんど見向きもされなかったが、稼働率を上げ、「使いやすく、もっと拡充してほしい」という要望が相次いでいる。両機能の技術者たちが一緒になり、腹を割った話し合いをしているようだ。

「一体開発オフィスは、あくまでツール。トヨタの弱点であるセクト主義の克服を目指した、働き方改革を推進するためのものである。別々に働いていた技術者をいかに交わらせるかがポイントだが、否定的な意見を出す人はいるものの、元の職場に戻りたいという人はいない。みな、前向きな意識は持っていると思う」と企画担当者は話す。

なお、オフィスは全面禁煙。お菓子は持ち込み可だそうだ。