ライバルが沈めば株は上がる

つまり、スキャンダル報道後の株価の値動きは上場廃止となるのか否かが重要なキーとなっていたのだ。上場廃止になると流動性が欠如し株の価値が目減りするため、投資家にとっては避けたい事柄である。その可能性が高いのであれば値段が少しでも高いうちに売ってしまったほうがよいと考えるのが自然であり、その流れを利用し売りで仕掛けてくる投資家もいる。オリンパスは壮絶な値動きとなったが、上場廃止を巡る思惑を読み解くことで底値を打ったタイミングを説明することができるのだ。

買い戻しの流れに乗った投資家の中には、オリンパスの技術力を評価し、長期的な目線で業績が低迷し続けることはないと判断した人もいただろう。いったん反発を開始した後はキレイな上昇トレンドを描いている。

スキャンダル報道による株価変動は事例によって様々だが、消費者に直接かかわる身近な商品の場合は株価が敏感に反応しやすい。食品など小売業の事故は業績に直接的な打撃を与えることが多いからだ。最近の事例としては、今年7月マクドナルドの期限切れ肉問題が大きく報道され、消費者に不安を与えた。顧客離れが進んだことで、7月の既存店売上高は前年比17.4%減となった。

これは02年BSE問題が発生したとき以来の大幅な落ち込みだ。10月には今期14年12月期の業績予想を下方修正し、上場来初の営業赤字転落を発表。食への安全志向が強い日本において、外食産業が顧客の信頼を失ったダメージはあまりに大きい。業績回復の兆しが見えるまで株価は軟調な値動きを余儀なくされそうだ。

また、他社のスキャンダル報道によってライバル会社が思わぬ恩恵を受けるケースもある。13年に粉飾決算報道が出た雪国まいたけは消費者の信用を失ったのだが、その顧客がライバル会社のホクトに流れたのだ。株式市場では、雪国まいたけの失態によりホクトの売り上げが伸びるかもしれないと予想した投資家がホクトの株を買うという現象が起きた。上位数社によって寡占されている市場であれば、そのうちの1社のネガティブ報道によってライバル企業の業績や株価が動くことがある。それを先読みしている賢い投資家も少なくないのだ。