小さな範囲でしか勝負できない理由

『実践版 孫子の兵法』鈴木博毅著(プレジデント社)

何かで成功した時、誰もが勝利を拡大したいと願いますが、上手くいくことは少ないものです。物理的に、小さな範囲でしかビジネスを展開できない理由あるからです。

それは大抵の場合、「距離」と「時間」のコストを解決できないことが原因です。

成功が小さな範囲に留まっているその他の理由は、戦法の幅がないことです。一つのことに成功した戦法を、まったく違う問題にも使ってしまうのです。

・「努力」で成功した人は、他の問題でも努力する。
・「忍耐」で成功した人は、他の問題でも耐えてみる。

自分が持っている道具が少ないので、その道具が有効な範囲しか掘り進めないのです。孫子の第九編「行軍」には次の言葉が出てきます。

「以上が、地形に応じた有利な戦法である。むかし、黄帝が天下を統一できたのは、この戦法を採用したからにほかならない」引用『孫子・呉子』守屋洋・守屋淳 プレジデント社より)

地形に応じた戦法とは「山岳地帯」「河川」「湿地帯」「平地」の4つです。つまり、すべての地形の分類に応じて、異なった戦法を採用していたのです。逆に「山岳地帯」だけの戦法に通じていれば、あなたが勝利するのは山岳だけです。河川の場合も同じです。勝てる場所だけに、勢力範囲は留まることになるのです。

1店舗のお店を繁盛させる方法と、複数の店を繁盛させる方法は違います。山岳地帯での戦い方が、河川での戦闘で通用しないことと同じです。

持っている解決策の種類と幅で、自分の活躍の範囲が決まるのです。

私たちの会社が拡大しないのは、現在の範囲以上の解決策を持たないからです。拡大をするためには、新しい問題の解決策を手に入れるか、学ぶ必要があります。

黄帝が、平地だけの戦法しか知らなかったらどうなっていたか。伝説上の偉大な皇帝といえど、その占領範囲は極めて限定されていたでしょう。地理的条件の違いに対して、1種類の戦い方しか知らなければ、勝てる場所が極めて限定されるからです。