企画というのは「企て」である


(上)はとバスは1948年に設立。バブル期に年間利用者94万人を記録するが、99年には約60万人まで減少。その後復活し、2012年度は20年ぶりに利用者90万人を回復した。(下)良い「組み合わせ」がヒット企画につながる

はとバスのパンフレットには、全部で130ちょっとのコースが掲載されています。春夏秋冬の季節ごとにパンフレットを改定するのですが、そのときに全体の3割のコースを入れ替えます。うち20本ぐらいは、過去商品のマイナーチェンジも含めた新企画です。

現在はその企画作業を、私を含め4人のチームで行っています。各シーズンのパンフレットの制作期間はだいたい45日程度で、その間に企画会議を3~4回やります。

個人的には、私の発想法はあまりシステマティックではなく、感性に頼る部分が大きいと思います。情報源は、街中に置いてある地域のフリーペーパー。東京なら地元の人しか知らない穴場情報、地方ならその地域の人が東京の何に関心を持っているかが書いてあったりしますから。あとはユニークな街番組や旅番組が多いBS放送をよく見るようにしていますし、街歩きもします。

メモは携帯電話のメモ機能を使って、思いついた言葉をストックしています。「どすこいはとバス」とか、これは相撲コースになるのかな(笑)。あとは隙間時間に手帳にあれこれ書き込むこともあります。

はとバスというと、地方から上京されてきた方が東京観光をするためのものというイメージが強いと思いますが、現在は首都圏のお客様と地方のお客様が半々ぐらいです。そうした中で、コースの企画づくりでは「エンターテインメント性」がますます重要なポイントになってきています。価格に見合った楽しみを得られる企画であることをアピールすることが必要です。

その意味では、コースのタイトルもすごく重要です。ときには最初にタイトルありきで、できあがったコースもあります。たとえば、「恋するラブバス」。とてもあやしいタイトルなんですが(笑)、11月から12月の晩に、カップルで2階建てのオープンバスに乗って夜景を見ていただく、というわかりやすいコースです。なんとなく友達以上恋人未満みたいなカップルが、寄り添って寒さをしのぎながら、通り過ぎる街並みを眺める。途中六本木ヒルズの屋上に上がり、街の灯りを見下ろしながら自分たちの将来を語り合う――みたいなストーリーで、これもヒットしました。

企画というのは、書いて字のごとく「企て」なんですよ。先ほどの「あやしさ」にもつながるんですが、ちょっと魔法をかけて、期待以上に楽しかったという感動をお客様に与えたい。ディズニーランドが素晴らしい夢と魔法の国であるのと同様に、はとバスが「あのバスに乗ると魔法にかかる」と言われる存在になることを目指しています。

(川口昌人=構成 相澤 正=撮影)
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