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表2 男性正規職員の職業別の年収(万円)

このやり方にて、グレーカラーとブルーカラーの平均年収も県別に出してみます。グレーカラーとは、販売職、サービス職、保安職を足し合わせたカテゴリーです。ブルーカラーとは、生産工程職、輸送・機械運転職、建設・採掘職、運搬・清掃・包装職をひっくるめたものなり。

社会学の職業階層カテゴリーでは、このような3分類(ホワイト、グレー、ブルー)が使われるのが一般的です。男性正社員について、この3群の平均年収を都道府県別に計算しました。表は、その一覧表です。

どうでしょう。東京と沖縄に黄色マークをつけましたが、前者のブルーカラー(444万円)と後者のホワイトカラー(474万円)が同じくらいですね。沖縄のグレー(343万円)は、東京のブルーよりも100万以上低くなっています。

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図1 Wカラーの年収が、東京のGカラーよりも低い県

居住地の違いによって年収の職業差が打ち消されている典型例ですが、全体的にみて、(1)ホワイトの年収が東京のグレーより低い県、(2)グレーの年収が東京のブルーより低い県も結構あるではありませんか。赤字がそれです。(1)のケースを地図にしておきましょう。

地方周辺県が該当するようですね。郷里の鹿児島にも色がついている。ふうむ、「住むところ」の影響、侮りがたし。

私は博士論文で、高等教育就学機会の地域間格差をテーマにしたのですが、大学進学率は家庭の所得水準や親の職業・学歴によって決まると同時に、地域によっても大きく違います。

冒頭の文献では、雇用が流出し衰退していく旧来型製造業都市と、それが集積するイノベーション都市との差が大きくなり、どちらに住むかによって、学歴のような属性変数の効果が回収されてしまうと言われています。東洋の日本でも、こういう事態になっていることは、今回の統計からうかがわれるところです。これから先、個人の地位達成のファクターとして、居住地という変数にもっと注目すべきかもしれません。

今回は都道府県単位の分析でしたが、望むべきは、もっと下った市区町村レベルでのデータがほしい。同じ東京都内にあっても、居住地によって、年収の学歴差や職業差が打ち消されるような現象がみられるか。それを吟味するデータが公開されることを期待し、身勝手な願望を記しておきます。

舞田敏彦(まいた・としひこ)
1976年生まれ。東京学芸大学大学院博士課程修了。博士(教育学)。武蔵野大学、杏林大学兼任講師。専攻は教育社会学、社会病理学、社会統計学。主な著書に『教育の使命と実態』『47都道府県の子どもたち』『47都道府県の青年たち』(いずれも武蔵野大学出版会)などがある。
(図版=舞田敏彦)
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