LPGのマーケットで培った競争力を都市ガスの分野で生かすことで、業界再編のキーを握る日本瓦斯の和田眞治社長

「大口の顧客がタンクの設備に何億円もの投資が必要なら、ローリー車でLNGタンクを運んで代用したらいい。モジュール化することで、オペレーションコストは格段に下がる。LPGで培ったノウハウは、都市ガスの事業でもフルに生かすことができる。小口では電力とのセット販売をどこよりも早く行い、総合エネルギー企業へ成長していきたい」と和田眞治社長は語る。

そのセット販売だが、ニチガスはエネルギー自由化が進む米国・テキサスの電力小売り会社に出資し、11年から電力の販売を開始。そこで得た期間を定めた固定料金制や土日の無料化などのメニュー構築のノウハウが転用される。しかし、それには電力での提携先が不可欠。しかも「安定した電力を継続的に供給できるところ」(和田社長)となると、新電力ではなくて既存の電力会社が視野に入ってくる。

提携する電力サイドは、ニチガスのシステムや首都圏での営業力を自社の事業強化に生かしていける。全面自由化による電力とガスの融合で、ニチガスが“台風の目”のような存在になって総合エネルギー企業を創出していくことが十分に考えられる。現在、何社かと検討が進められており、早ければ年内にも国内初のセット販売が始まりそうで、この動きからは目が離せない。

また、総合エネルギー企業が誕生していくことは、世界のエネルギー・インフラ市場におけるプレゼンスの向上に寄与する。もともと日本は、LNGの管理技術にしても原発建設・運用技術にしても高いレベルにある。その技術供与を望む新興国も多い。そのときワンストップで対応できれば、大きなビジネスにつながっていくはずだ。

(宇佐見利明、加々美義人=撮影)
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