プレゼン話し方研究所社長の吉野真由美さんも、話の主導権を相手に持っていかれて商談やプレゼンと関係のない話が続きそうなったら、ひとまず「○○さんにとって、とても大切なお話なんですね」と肯定しながら受け止めるそうだ。そして「手短にお話をお聞きしてしまうのは、とてももったいないような気がして仕方がありません。ですので今度またお時間を頂戴して、しっかり最後までお聞かせいただけませんでしょうか」といって本題に戻ることを勧める。

「ポイントは『ちゃんと時間を取って、もっとじっくり話を聞きたい』と伝えることです。それで相手も『自分のことを大事に思ってくれている』と感じてくれて、ほとんどの場合、『いいよ』といってくれるようになります。その後、話を本題に切り返してもこちらのいうことをニコニコしながら聞いてくれ、安心して話を進めることができます」と吉野さんはいう。

よく間違いを犯しがちなのが、詰めに入った2回目以降の商談やプレゼンテーションの場。同じ話では飽きてしまって話が脱線しないか気になり、1回目とは違う切り口の話でアプローチしようとした経験がある人も多いのではないか。しかし吉野さんにいわせると、これは大きな間違いなのだという。

「そもそも1週間も前の話をどれくらいの人が正確に覚えているものなのでしょう。ほとんど記憶していないはずです。それに、もともと相手はこちらの話を気に入っているから改めて時間をとってくれているわけなので、1回目と同じ話を堂々とすればいいのです。2回目は上役が出てくるからといって、気の利いた話をしようとする人もいますが、これもNG。自分が感心した話を上司に聞かせて稟議を通しやすくしたいという先方の心遣いを、無駄にする行為にほかならないからなのです」

重要な点は自分の話に自信を持つことだ。たとえ相手が脱線したとしても、それを恐れず、冷静に対応していこう。

【○】今度またお時間を頂戴して、ゆっくりお聞かせください。
【×】それは本日のお話とは関係ありません。

プレゼン話し方研究所社長
吉野真由美
同志社大学卒業後、生命保険会社などを経て英語教育会社に入社。12年間連続でセールス上位入賞。2005年、プレゼン話し方研究所を設立し現職に就任。
 
ロコンド代表取締役社長
田中裕輔
2003年、一橋大学卒業後にマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。2011年1月、株式会社ジェイド(靴の通販サイト ロコンド.jp)の創業に参画。同年2月から現職。著書に『なぜマッキンゼーの人は年俸1億円でも辞めるのか?』がある。
 
1st Avenue代表
マンジョット・ベディ
1969年、インド生まれ。17歳のときに来日。2006年、1st Avenue設立。クリエイティブ・ディレクターとして多方面で活躍している。

 

(加々美義人、澁谷高晴、坂井 和=撮影)
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