――現状では長時間労働などがネックになり、約6割の女性が出産後に退職し、その後、仕事に復帰しません。
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女性の年齢階級別労働力率(国際比較)を見ると、出産・育児で一度下がり、その後、育児を終えて復職し「M」の形を描く。しかし欧米では1980年代にこのM字から脱却、男性と同じ台形に。日本はいまだに脱却できず、さらに復職先もフルタイムではないなど課題は多い。

女性が仕事を辞めて復帰しないのにはさまざまな理由があります。その問題の多くを改善するには、政府が大きな役割を担えるのです。

例えば、スウェーデンでは女性は必ず仕事復帰をします。政府がチャイルドケアの無償提供を徹底し、保育園の空きを確保します。安心できる保育園に預けて働くことは悪いことではなく、いたって当たり前のことなのです。

イギリスで、出産後に職場復帰する女性が多いのは家事や子育てを男性も負担していることと、男性がそうできる残業のない労働環境があるからです。私が若かった頃はイギリスも今の日本と同じような状況でした。労働時間も長く、女性の管理職もいなかった。でも、こうして変わってきたのです。

やり方は一つではありません。日本人は日本に合ったやり方を見つけていかなければいけません。

――結婚や出産などのライフイベントは、キャリアの障害になりませんか?

確かに女性が、子ども、夫、そして責任の重い仕事を持つことは、非常に大変なことです。自分の経験からもよくわかります。

子どもが欲しい場合、早く産むか、キャリアを形成してから遅く産むかという選択肢をよくいわれます。これには正解はありません。私は遅くに産んだので、出産前にキャリアを築いていました。キャリアの途中で辞めたり、休職したりしたことはありませんでしたが、私の年代で成功している女性はそうするしかなかった人が多いのです。私の場合も、子どもがまだ小さかったころは、収入がほとんどベビーシッター代に消えていきました。その代わり、子どもが家にいるときは、必ず大人も家にいて子どもたちだけにならないようにしましたし、子どもたちもある程度の年齢になると母親のキャリアの成功を喜んでくれました。

もちろん当時は小さな子どもがいて、自分が寝る時間はほとんどありませんでした。子どもを寝かしつけてから仕事もしました。しかし、子育ては5年もすると少し落ち着き、15年たつと親をそれほど必要としなくなります。でも、女性は仕事を一度辞めてしまうと、再就職をするのは非常に大変です。だからこそ、私は常に、女性たちには働き続けるように励ましています。

また、本来であれば、女性は仕事を選択する際に、出産後に仕事復帰がしやすい職種や職場を考えるのも大事でしょうね。夫をどう選ぶかも含め、女性は男性よりはるかに多くの人生の選択をしなくてはなりません。辞めても復帰できる仕事かどうか、自分が就く職業と会社を慎重に選ぶ必要があります。女性は若いうちからの人生設計が求められてとても大変ですが、でも、それが賢いやり方でしょう。